γシクロデキストリン
CoQ10を包み込み、吸収率を高める環状オリゴ糖
2001年に食薬区分の改正で食品認可を受けて以来、抗老化サプリメントの頂点にまで駆け上ったCoQ10。医薬品として虚血性心疾患等の治療に使われてきた同素材に各種健康関連メディアが着目し、露出が高まり、消費者認知が進み、現在の地位を築いた。しかしCoQ10が光や熱に非常に弱く、不安定な物質であること、さらにCoQ10は脂溶性であることから、通常のサプリメントで摂取しても吸収率が低いことはあまり知られていない。
このCoQ10の欠点をカバーする添加物として注目されているのが、シクロデキストリン(以下CD)。トウモロコシや馬鈴薯などのデンプンにBacillus類の微生物が生産する酵素(CGTase)を作用させることで生成される環状オリゴ糖だ。日本で1976年に工業生産が始まり、現在世界で生産されているものはα、β、γCDの3種類。ごく最近までCDは非常に高価な素材であったが、ワッカーケミー社(ドイツ)が安価供給およびα、β、γCDを容易に作り分ける技術開発に成功し、近年、市場の開拓が進んでいる。
CDの代表的なメカニズムとして挙げられるのが包接機能だ。CDは分子構造が底のないバケツ型であり、バケツの外側は親水性、内側が疎水性となっている。内側にはさまざまな分子を包み込む性質(包接機能)がある。これにより、包接された有効成分は安定化し、光や紫外線、熱による分解・酸化から身を守ることができる。図1は日光露光下、図2は高温環境下でのCoQ10の安定性を調べた結果であるが、CoQ10のデンプン化合物、市販の水溶性CoQ10では、CoQ10は5時間で急速に減少し、25時間後にはほとんどなくなっている。これに対し、γCD包接CoQ10は25時間後でも50%の減少にとどまっている。また高温環境での劣化はまったくない。さらにCDには分子間力を断ち切り、生体内における有効成分の吸収率を高めることにも一役買う。吸収率が高い理由はまだ明確にされていないが、図3に簡略して示すとおり、CoQ10がCD包接により、結合(高分子化)せずに腸管膜を通過することが考えられる。
ちなみに、現在CDは世界各国で食品、化粧品、医薬品添加物等に使用されているが、国ごとに適用法規が異なる。βCDは日本では食品添加物として無制限に使用できるが、欧米ではWHOとFAOが組織した世界食品添加物専門家会議(JECFA)によって、一日摂取量(ADI)が5mg/kg/日と制限されている。独ワッカ一社の日本総代理店である㈱シクロケムでは、JECFAにADIを特定する必要のない安全な物質であると認可されたγCDを中心に製品開発を行なっている。被包接素材は、CoQ10のほか、クマザサパウダー、DHA/EPA、甘茶葉等。