株式会社シクロケム
日本語|English
ニュースリリース

海洋構造物への貝類付着を防止

CDとワサビ成分で忌避効果

シクロケム(本社・兵庫県神戸市、寺尾啓二社長)は、ワサビなどに含まれる揮発成分をシクロデキストリン(CD)と組み合わせることで、海洋構造物などへの貝類の付着を防止する技術を開発した。通常は水に溶けるCDをアセチル化して不溶性にし、CDの包接機能でワサビを安定化したもので、長期にわたる貝類忌避効果が見込まれるという。発電所や工場などの取水・排水口に使われるコンクリート製品をはじめ船底塗料など多方面への応用が期待でき、関連ユーザーと連携しながら実用化につなげていく意向だ。

コンクリ製品や塗料用に展開

環状オリゴ糖のCDには内部の空洞に物質を取り込む包接機能がある。現在は食品関連用途が多いが、シクロケムではダイオキシンや硫化水素、揮発性有機化合物などの吸着除去といった工業用途の開拓もかねて進めている。その一環として今回、建設業や環境関連製品を手掛ける栄和(神奈川県鎌倉市)と貝類忌避への利用技術を共同開発した。特許は昨年末に出願している。 貝類忌避物質には、ワサビやカラシなどに含まれるアリルイソチオシアネート(AITC)を使用。CDはAITC分子の大きさに合う包接空洞を持つαCDを選び、この水酸基をアセチル化したトリアセチル化αCDでAITCを包接した。同物質を貝類忌避効果を測る標準手段で試験したところ、良好な効果が得られた。

また、同物質を樹脂エマルジョンに微量含ませて空隙などに練り込んだコンクリート塊によるフィールド試験を実施、海での有効性も確認している。

トリアセチル化CDは油相には溶解するが水には溶けず、AITCの包接安定化も高い。3ヶ月のフィールド試験に続いて現在は6ヶ月試験に入っており、さらにその先も続けていく方針。

海洋構造物への貝類付着については、例えば火力発電所では、取水・排水口のボックスカルバートなどにたい積した貝類を年に2回程度除去し、処分費も含めかなりのコストを費やしている。シクロケムでは現在、栄和などの開発技術の関連コンクリート製品への応用に取り組み、同用途では近く実用化できる見通しを得ている。

トリアセチル化αCD-AITC包接体は塗料やフィルム、繊維など広範な展開が見込め、貝類意外の生物付着防止効果も期待できる。船底塗料用の貝類付着防止物質としても今後注目されそうだ。