CoQ10の安定性吸収率大幅改善
新しい物性、4.2倍高い活性を示す
薬局で、スーパーで、コエンザイムQ10(以下CoQ10)が飛ぶように売れている。CoQ10は、別名ビタミンQとも呼ばれ、体内に広く存在する補酵素だ。特に肝臓や腎臓に多く含まれ、細胞活動に欠かせないエネルギーを作り出す。強力な抗酸化作用があるが、製品化されたものは不安定で吸収されにくいという性質があった。(株)シクロケム(本社=神戸市、078・302・7003/東京オフィス=東京都中央区、03・6262・1511)は、でんぷんから合成するシクロデキストリンを使いこの問題を解決。今、市場から最も注目される企業だ。
サプリメント(栄養補助食品)という言葉には食品とも薬品ともつかない怪しげな響きがあった。しかし昨秋、テレビ、新聞、雑誌などがコエンザイムQ10(以下CoQ10)を取り上げると消費に火がつき、一気にブレーク。店頭には今も関連商品の品不足が続く。医療費の自己負担額が増加する中、サプリメントの隆盛は今後も続く。
CoQ10は、健康を維持する重要な役目を担っている。体の細胞すべてに存在し、体内で合成されるが、年齢を重ねるとともに不足がちになる。消費者が注目するのは、CoQ10の強力な抗酸化作用だ。
CoQ10の抗酸化作用は、①高血圧や動脈硬化を予防②紫外線の皮脂酸化を防止③細胞自体に活性を与える、などに効果があり、一般には驚異の若返りサプリメントとして認知される。
このように良いことばかりに見えるCoQ10だが、実は水に溶けない物質であり、吸収率が非常に悪く、摂取しても大部分が排せつされるという問題をかかえていた。また、熱や紫外線、他の抗酸化物質(ビタミンCやEなど)に対しても不安定で、より高い吸収率と安定性のある商品が待たれていた。
(株)シクロケムは、ドイツワッカー社との共同開発でγシクロデキストリン包接によるCoQ10の安定化と吸収率向上に世界で初めて成功した。同社の寺尾啓二社長は、「作年、熊本大学などで行った実験で、γシクロデキストリンはCoQ10とナノメーターサイズの超細粒子を形成、溶解性や経口投与後のBA(生物学的利用能)改善に有用なことを明らかにした。また、本来期待される抗酸化機能も、CoQ10とγシクロデキストリン複合体は通常のCoQ10と比べ、4.2倍高いラジカル消去活性を示した」と述べ、γシクロデキストリンが創出する新しい物性に自信を見せる。
シクロデキストリンは、トウモロコシやバレイショのでんぷんから合成する環状オリゴ糖で、外側は親水性、内側は親油性がある。環の内腔にさまざまな分子を包み込む(包接)ことで、油性物質を水に溶かしたり物質の安定性を高めることができる。この性質を生かし、医療、食品、化学、農業、工業などさまざまな分野で広く用いられている。中でもγシクロデキストリンは、食品に広く使われるなど安全性に定評がある。
寺尾社長は、「他の抗酸化物質に対しても、同様の効果が期待できるはず」と語る。 (三輪)