株式会社シクロケム
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ニュースリリース

シクロデキストリンにVOC吸着機能

シクロケムが知見 無機複合材 水澤化学と開発へ
環境・医療分野に展開

シクロケム(本社・兵庫県神戸市、寺尾啓二社長)は、環状オリゴ糖のシクロデキストリン(CD)が空気中に放散した揮発性有機化合物(VOC)を効率よく吸着することを見出すとともに、CDと無機材料を組み合わせた環境改善素材の開発に水澤化学工業(本社・東京都中央区)と共同で取り組む。フィルターや建材、トイレタリー製品などへの幅広い応用を想定しており、開発成果を両社で展開する。シックハウス症候群対策や悪臭除去など環境関連のほかに、将来は医療分野にも展開していく計画だ。

シクロケムは、独ワッカー・ケミーの日本法人のファインケミカル部門が独立して昨年十二月に発足したベンチャー企業で、ワッカー・バイオケム(本社・米国)の各種CD製品を日本で独占供給している。CDには分子の空洞中に有機物などを取り込む包接作用があるが、同社が七つのブドウ糖が環状に連なったβCDについてワッカー社製品と国内他社品のトルエン含有量比較をしていたところ、βCDに空気中のトルエン吸着作用があることを偶然見いだした。

同社では、CDにはトルエンのみならずキシレンやベンゼン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど各種VOCに対しても同様の優れた吸着作用があることを確認。この知見を基に無機化学品メーカーの水澤化学と環境改善用複合型新素材などを共同開発していくことで合意した。

CDにはVOCのほかにバクテリアやウィルス、花粉なども吸着する特性がある。一方、ゼオライトや活性白土といった無機素材にはアンモニアやメチルメルカプタン、硫化水素、イソ吉草酸などの悪臭除去機能があり、これら無機素材とβCDやαCDを組み合わせることで、感染症やアトピー、花粉症、シックハウスなどの対策に有効な高機能複合型新素材を開発していく。応用製品としては、例えばCDと無機素材を複合させた粉体を使ったフィルターや建材などのほか、CD水溶液フィルターと無機材フィルターを組み合わせた空気清浄装置などが考えられるという。

CDには、加熱などで包接物を外す作用があるためリサイクルも容易なほか、有害物質分解微生物の活性を高める効果もあるため、土壌など環境中に放出した場合も包接物質の分解を促進できる。

また医療分野では、糖尿病・腎炎患者向けの医療用活性炭や、ろ過型繊維ポリマーに代わる安価で安全な血液透析用素材などへの展開を狙っている。