オリゴ糖で分解を促進
シクロケム(神戸市、寺尾啓二社長)は、オリゴ糖の一種であるシクロデキストリン(CD)を利用したバイオレメディエーションによる土壌浄化技術の国内展開を図る。今年度中に大成建設と共同で実証試験を実施、2004年度にも実用化する予定だ。
CDを利用した土壌浄化技術は、ハンガリーのシクロラボ社とハンガリー大が共同研究を進めており、シクロケムはシクロラボ社からの技術導入を図っている。
CDの世界シェア80%を握る独ワッカーケミー社や、国内では東京工芸大なども環境修復への利用を研究しており、高い効果が得られながら環境負担の低い技術として期待されている。微生物による分解を促進する技術であるため、ダイオキシン類やPCB、VOC、油など重金属以外の汚染に対して有効だ。
CDはブドウ糖を構成単位とする環状オリゴ糖で、でんぷんを原料とする。バケツ状の分子を持っており、内部に様々な分子を包み込むことができるのが特徴だ。人体に無害なため、身近なところでは消臭剤などに利用されている。
バイオレメディエーションによる浄化は、土壌の硬く固化した部分の汚染を効果的に浄化できるかがカギとなる。微生物や酸素、栄養素などが汚染物質に到達できなければ、浄化できないからだ。このため、掘削した土壌をかく拌して処理槽に投入し、通気や散水しながら微生物を活性化する方法などが開発されている。
CDは親水性が高く、水に溶かして散布・注入すれば固化部分に到達しやすい。到達すればバケツ状の分子で汚染物質を包み、水の浸透によって汚染物質を分散。微生物に到達しやすくし、分解を促進するという仕組みだ。原位置での注入でも効果が見込めるが、前述のような処理槽で使用すれば効果は高くなる。
ハンガリー大ではPCBやディーゼルオイルによる汚染土壌に対してCDを利用した浄化実験を行っており、固化した土壌およびスラリー状にした土壌に対して、生分解や脱塩素化に大きな効果があったことを確認している。一般的にバイオレメディエーションの効果が低いとされるような状況でも有効だという。