α-CDを食品へ展開
血糖値の上昇抑制効果確認
独ワッカー・ケミー社のCD(シクロデキストリン)日本総代理店であるシクロケム(兵庫県神戸市、寺尾啓二社長)はこのほど、製造元の米ワッカー・バイオケムと連携してα-CDに血糖値の抑制効果があることを見出し、食品分野への応用開発を開始した。かねてから同社が医薬品分野などへ供給していたα-CDを今回の知見をもとに糖尿病予防・ダイエット用の機能性食品素材として手がけていくもの。“褐変しない難消化性デキストリン機能”などの加工適性も踏まえ、各方面へ販路を築いていく考え。米飯への直接添加をはじめ、うどんなどの麺類、機能性ドリンク、健康食品などで市場の掘り起こしを図る。
α-CDは、水に対する溶解性が高く、腸内細菌で分解される代謝機能などを有しているのが特徴。今回の新知見は臨床試験などで血糖値の上昇抑制効果を突き止め、米国ワッカーが基本部分、シクロケムが用途特許を国内外に出願している。特に注目されるのが米飯への応用。α-CDは、構造上オリゴ糖が6個つながる環状オリゴ糖で熱の安定性が高い。また、余分な糖やアミノ酸がついていないため、メイラード反応による褐変が起きにくく、風味にも影響しない。血糖値に関しては、うどん200gとα-CD10g入りの米飯200gを摂取して、無添加のものと比較評価したところ、無添加は30分後に血糖値が82から159に急激に上昇したのに対し、添加した方は82から120と顕著な抑制効果を示す結果となった。
ワッカー社は、独自の技術で開発した酵素によるテンプレート法によって、でん粉から選択的に天然型α、Β、γCDなどを製造しており、α、Β、γが混在するミックス品から各々分離・濃縮する従来の製造に比べ、コスト的に有利となっている。原料のコーンスターチは、隣接する米国カーギル社(アイオワ州エディブル)から供給を受け、ワッカー・バイオケムのCD年産キャパは5000t。世界のおよそ80%のシェアを誇る最大手である。
一方で、シクロケムは、独ワッカーの日本法人ワッカーケミカルズイーストアジアのCD事業とファインケミカル事業を継承し、昨年12月に営業活動を開始した新しい会社。同社が蓄積したデータをもとにバルク供給を行うほか、小分け商品を純正化学が取り扱う。