第17回 シクロデキストリンによるTea Tree Oil成分の安定化検討
Tea Tree Oilとは
Tea Tree Oil(以下、TTO)はオーストラリアに自生するMelaleuca alternifoliaの葉から抽出される天然アロマオイルである。優れた抗菌性と幅広い抗菌スペクトラム、また、高い安全性を有することから、化粧品を始めコスメシューティカル・消臭用途など幅広く利用されている。
TTOの含有成分は、主としてモノテルペン・テルペンアルコールおよびセスキテルペンからなっており、その種類は90以上とも言われる。そのうち9種類についてはTTO品質保証のために、ISO 4730規格およびAS 2782-1997規格にて含有成分の組成比率が規定されている。
TTOの成分規格値
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Bronson & Jacobs製OILTEA-185を使用
目的
規格で組織比率が規定されている9種類のなかでも、Terpinen-4-olはTTOに突出して多く含まれる成分である。これが30%以上含まれていないと、規格外となってしまう。
また、α-Terpineneは熱や光、大気中の酸素に晒されることで容易に酸化し、p-Cymeneを生じる。オイルの酸化により組成変化が生じた場合、上記の品質規格を満たせなく恐れがある。また、酸化物によるアレルギー性や皮膚刺激性が増加するとの報告もあるため、オイルの酸化安定化は極めて重要である。
そこで、本研究では各種CDによるTTOの熱安定性改善効果について検討を行った。
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TTOは加熱によりα-TerpineneやTerpinen-4-olは減少、酸化体であるp-Cymeneは増加し、規格外となってしまう。
熱安定性の評価方法
α-CD、β-CD、γ-CDで包摂したTTO包接粉末を50℃と100℃で熱処理し。GCにてTTO中の成分である、α-Terpinene、p-Cymene、Terpinen-4-olの定量を分析した。
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包接粉末にする事で、加熱によるα-TerpineneやTerpinen-4-olの減少、p-Cymeneの増加を抑えることができた。
結果
CDによるα-Terpineneの熱安定化効果は、α-CD > β-CD > γ-CDの順に大きく、α-CDを用いることで、p-Cymeneの生成を顕著に抑制することができた。
安定なTTO包接粉末を用いる事で、効果が持続し、安全な製品とする事が可能であることがわかった。