第20回 ヨウ素-化学修飾シクロデキストリン包接体の抗菌活性に関する検討|株式会社シクロケムバイオ
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研究成果

第20回 ヨウ素-化学修飾シクロデキストリン包接体の抗菌活性に関する検討

CD-I(β-シクロデキストリンとヨウ素の包接体)の工業化に成功し、現在では、飼料添加物の防腐、硫化水素の除去、土壌改良剤、農薬、家電製品の消臭抗菌など、様々な分野で利用され始めている。
CD-Iの主な利用目的は、抗菌作用と消臭効果であるが、さらに幅広い分野における抗菌剤としての利用を目的として、β-CDとヨウ素の包接体(BCD-I)のみならず、化学修飾β-CDの包摂体の抗菌作用を検討した。
ここで使用した化学修飾β-CDは、水溶性の高いメチル化β-CDCAVASOL® W7 M)や水酸基やアミノ基と容易に反応して高分子類と共有結合を形成できる反応性のCDであるモノクロロトリアジノ化β-CD(CAVASOL® W7 MCT)である。
メチル化β-CD(MCD)の包接体であるMCD-Iや、モノクロロトリアジノ化β-CDの包接体であるMCTCD-Iも、CD-Iと同様に幅広い抗菌スペクトルを有していることが判明したので紹介する。

PVP-IとCD-Iの抗菌活性(コロニー数)の比較
PVP-IとCD-Iの抗菌活性(コロニー数)の比較

+: moderate, ++: remarkable

CD-I及びMCD-Iの最小発育阻止濃度(MIC)値(固体培地法)
CD-I及びMCD-Iの最小発育阻止濃度(MIC)値(固体培地法)

MCD-I:有効ヨウ素量3%のメチル化CD包接体水溶液

CD-I及びMCD-Iの最小殺菌濃度(MBC)値(液体培地法)
CD-I及びMCD-Iの最小殺菌濃度(MBC)値(液体培地法)

MCD-I:有効ヨウ素量3%のメチル化CD包接体水溶液

真菌(カビ)の最小殺菌濃度(MBC)値
真菌(カビ)の最小殺菌濃度(MBC)値

MCTCDならびにMCTCD-IのEscherichia Coliに対する殺菌作用

実験方法Escherichia Coli F1をBHI培地により24時間培養し、この培養液を滅菌生理的食塩水により1×106個/mLに調製した。一方被験薬物MCT-CDならびにMCTCD-Iを滅菌生理的食塩水によりそれぞれ1000ppm、10000ppmの濃度に調製し、同食塩水により2倍段階希釈を行った。この各希釈系列(各4.5mL)に大腸菌液0.5mLを添加し、10分間室温(23℃)下放置した後、その各0.1mLを標準寒天培地に塗末し、37℃, 20時間培養し、コロニー発生の有無を観察した。

結果:MCTCDの1000ppmから7.8ppmにいたる全シャーレに多数のコロニーが発生。一方、MCTCD-Iの10000ppmから10ppmまでのシャーレのうち、10000ppmから20ppmまではコロニーは検出されなかった。10ppmには多数のコロニーが検出された。したがってMCTCDのMBCは>1000ppm、MCTCD-IのMBCは20ppmである。

(ppm)

結果

  • ヨウ素-CD包接体の抗菌活性は未修飾、化学修飾CDの種類にかかわらず、有効ヨウ素量による。つまり、ヨウ素濃度が高い場合に、強い抗菌力を示す。
  • MBC試験によって、各種真菌(カビ)に対しても有効な殺菌力を有していることが判明した。
  • ヨウ素-CD包接体は、ポリビニルピロリドンヨードと比較して、遜色のない活性を有することが判明した。
  • モノクロロトリアジノ化CDは、トリアジン基を有しているにも関わらず抗菌活性を示さないが、ヨウ素包接体とすることで、他の化学修飾CD同様に抗菌活性を示す。