第21回 αリポ酸R体-γ-シクロデキストリン包接体~熱・酸に対する安定性改善効果~
αリポ酸とは
αリポ酸(ALA)はミトコンドリア中に存在し、糖類からのエネルギー産生において補酵素(コエンザイム)として作用する物質です。
αリポ酸R体について
αリポ酸(図2)は光学活性を有し、R体とS体の2種類の光学異性体が存在していますが、生体内にはR体のみが存在します。
工業的にはR体とS体を等量ずつ含むラセミ体が製造されており、市販されているαリポ酸含有サプリメントや栄養補助食品にはこのラセミ体が使用されています。
技術的には生体内に存在するR体を単離することは可能ですが、ラセミ体に比べR体は融点が低く極めて不安定で、熱や酸によってポリマー化しやすいためにαリポ酸R体(RALA)を安定に配合することは困難でした。
αリポ酸R体の安定化技術
そこでシクロケムバイオでは独自の方法を用い、αリポ酸R体を環状オリゴ糖であるシクロデキストリン(CD)で包接化し、αリポ酸R体-CD包接体(以下、RALA-CD)を開発しました。これにより、αリポ酸R体の安定性を向上させ、食品素材として商品化することに成功しました。
RALA-CDの熱安定性改善効果
【実験方法】
RALA-CDを70℃飽和水蒸気圧下で2時間保存した後のαリポ酸R体の含有量を測定しました。
保存前の含有量に対する保存後の含有量の比率を残存率として計算しました。
【結果】
RALA-CDの安定性は100%と非常に高く、αリポ酸R体そのものよりも大きく向上しました。
また、一般的にαリポ酸R体よりも安定であると言われているαリポ酸Na塩よりもさらに高い安定性を示しました。
RALA-CDの酸安定性改善効果
【実験方法】
薬局方・崩壊試験第1液(34mM NaCl水溶液、pH1.2)を人工胃液とし、その人工胃液にRALA-CDを加えて1分間超音波分散させた後、その懸濁液を37℃の浴槽中で60分間撹拌しました。
次に希釈溶媒を用いて均一になるように溶解させ、溶液に含まれるαリポ酸R体の含有量をHPLCにて定量しました。人工胃液処理前のαリポ酸R体含有量に対する処理後の含有量の比率を残存率としました。
【結果】
αリポ酸R体では人工胃液中で大きなポリマーが生成し、残存率は43%でしたが、RALA-CDではポリマーは確認されず、残存率は100%となりました。
αリポ酸R体およびNa塩よりも酸に対する安定性が大きく向上しました。