研究成果
第25回 脂溶性物質-γ-シクロデキストリン包接複合体に対する糖分解酵素の影響
背景と試験目的
コエンザイムQ10(CoQ10)やクルクミンなどの腸管吸収性の低い脂溶性物質は、アミラーゼ消化性のγ-シクロデキストリン(γ-CD)と水に不溶な包接複合体を形成し、生物学的利用能が向上することが知られている1), 2)。
溶解性が低いのにも関わらず、生物学的利用能が向上する機構は、腸管内で胆汁酸によってγ-CD包接複合体からCoQ10やクルクミンの解離が起こり、フリーになったγ-CDがアミラーゼの攻撃を受けて分解する為、 CoQ10やクルクミンが継続的に放出される事によると考えられる。
1) K. Terao, et al., Nutrition Research, 2006, 26 503-508.
2) 池田ら、日本農芸化学会2009年度大会要旨集(2009.3.27-29, 福岡)
クルクミン包接体の吸収性
げっ歯類を用いた生物学的利用能の測定(ワッカー社データ)
In vivo試験
- 下記の3種類のクルクミン製剤を用いたラットへの強制投与による0から4時間後のAUC・Cmaxを測定
・CAVAMAX® W8 クルクミン(クルクミン包接複合体)
・クルクミン抽出物
・他社吸収型クルクミン製剤 - ラット(Sprague Dawley rats)に対し、500mg/kg体重を単回投与した。
- 血漿中のクルクミン、クルクミン硫酸塩、クルクミン-グルクロニドをHPLCによって分析した。
結論
CAVAMAX® W8 クルクミンは、他社製クルクミン製剤やクルクミン抽出物に比べて一番高い生物学的利用能を示した(0-4時間)。
γ-CDの消化性
胆汁酸成分であるNaTC存在下におけるアミラーゼ分解の挙動
でんぷんを分解する働きのあるアミラーゼによってγ-CDも分解されるが、NaTCを包接したγ-CDはアミラーゼの分解を受けにくくなることが判明
胆汁酸成分の一つであるタウロコール酸Na(NaTC)存在下でのCurの水への可溶化
クルクミン包接複合体のγ-CDの分解
クルクミン包接複合体のクルクミンがNaTCと置き換わっていると考えられる。
クルクミン包接複合体は難水溶性、しかしNaTC包接複合体は水溶性であり、溶けていないとアミラーゼは作用できなかったが、NaTCによって溶けたγ-CDがアミラーゼの作用を受ける様になったと考えられる。
まとめ
- CoQ10包接体と同様、クルクミン包接体もNaTCの存在で用量依存的にアミラーゼによるγ-CDの分解が促進された。
→ 胆汁酸によってクルクミンは包接複合体から外れる - クルクミン包接体にNaTCを添加すると、NaTCの用量依存的に溶解度が上昇した。
→ 可溶化には胆汁酸と包接による微粒子化が重要
「腸管内で胆汁酸によってγ-CD包接体からゲスト分子の解離が起こり、フリーになったγ-CDがアミラーゼの攻撃を受けて分解する為、CoQ10が継続的に放出される事によるであろう」という生物学的利用能向上の機構を支持する結果が得られた。