第81回 α-シクロデキストリンによるキュウリの脂質低減作用の向上に関する検討|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第81回 α-シクロデキストリンによるキュウリの脂質低減作用の向上に関する検討

概要

キュウリ(Cucumis sativus L.)は脂質低減作用を有しており、近年、ホスホリパーゼCが多く含まれていることが報告されています1)。ホスホリパーゼCはリン脂質分解酵素の一種で小腸管腔にて脂質の溶解と吸収を抑制する酵素です。しかし、脂質低減作用を発揮するためにはキュウリを毎日100g以上の量を摂取しなければならないことや、加熱処理などによって酵素活性が低下する問題があります。一方、当社では、α-シクロデキストリン(α-CD)が小腸液中の胆汁酸ミセルに含まれるリン脂質を析出させてコレステロール溶解度を低減させること2)や、キウイのタンパク分解酵素を安定化させること3)を明らかにしています。
本研究では、キュウリとα-CDの組み合わせによる小腸液に対するコレステロール溶解性低減効果への影響、α-CDによるホスホリパーゼCの安定化、さらにはキュウリの粉末化について検討を行いました。

実験

キュウリ粉砕物(Cuc)とα-CD混合液(Cuc-α-CDmix)のコレステロール溶解度試験

市販のキュウリに脱イオン水、α-CDを加えてミキサーで撹拌後、ろ過して得られたろ液をCuc-α-CDmixとした。コレステロール溶解度試験は既報2)を参考に食後の腸液を模した人工腸液(FeSSIF)を用い行った。

キュウリ粗酵素画分(CucEnz)とそのα-CD粉末(CucEnz-α-CD)の安定性評価

CucEnzの調製およびホスホリパーゼC活性試験については既報1)を参考に行った。またCucEnzに脱イオン水とα-CDを加えた後、凍結乾燥することによりCucEnz-α-CD得た。

α-CDによるキュウリの粉末化検討

キュウリに脱イオン水とα-CDを加えてミキサーで撹拌し得られたペーストを凍結乾燥した。

結果と考察

コレステロール溶解度試験の結果を図1に示した。CaCl2無添加の場合ではCuc、Cuc-α-CDmixいずれもコレステロールの溶解性低減効果を示さなかったが、CaCl2を添加した場合ではどちらも溶解性低減効果を示し、特にCuc-α-CDmixで顕著な効果を示した。ホスホリパーゼCの酵素活性にはカルシウムイオンが影響することから、Cucによるのコレステロール溶解度低減作用はホスホリパーゼCが関与しており、さらに、α-CDはホスホリパーゼCの活性を高めていることがが示唆された。
次に、ホスホリパーゼCの安定性について、キュウリ粗酵素画分を用いてα-CDの影響を検討した。熱処理前のCucEnzとCucEnz-α-CDは同程度の活性を示したが、95℃の熱処理後では、CucEnzは活性が低下し、CucEnz-α-CDは活性の低下が抑制されたことから、α-CDによるホスホリパーゼCの安定化が示唆された。
最後に、キュウリ固形分を10、25、50、75、100%の割合とした粉末化検討を行った結果、キュウリ固形分が75%以上では粉末状態にならなかったが、50%以下では良好な粉末状態を示した。

図1. 人工腸液中のコレステロールの溶解度におけるキュウリおよびそのα-CD混合物の影響
図1. 人工腸液中のコレステロールの溶解度におけるキュウリおよびそのα-CD混合物の影響

まとめ

α-CDを用いることによって、キュウリの脂質溶解性低減効果が向上すること、ホスホリパーゼC活性が安定化すること、粉末化することが明らかとなりました。本研究により、キュウリ‐α-CD粉末は機能性食品素材としての応用が期待できます。

参考文献

1) 杉森大助ら、特開2011-10608.
2) T. Furune, et al.,Beilstein .J.Org.Chem. 10, 2827 (2014).
3) 麻田佳珠ら、第26回シクロデキストリンシンポジウム講演要旨集, 148-149 (2009).