第106回 α-シクロデキストリンによるポリコサノールの吸収性改善に関する検討|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第106回 α-シクロデキストリンによるポリコサノールの吸収性改善に関する検討

概要

米ぬかはγ-オリザノールやフェルラ酸、トコトリエノールなど多くの機能性成分を含み、その中でも特に近年注目されているポリコサノールは、炭素数20以上の高級脂肪族アルコールの組成物であり、運動能力1)やストレスの緩和2)、肝機能の改善、小型LDLコレステロールの低減といった効果を示すことが知られています。しかし、ポリコサノールは水への溶解度が極めて低く、摂取した後、生体内に吸収されにくいと考えられるため、水への溶解度を改善することが重要です。これまでシクロデキストリン(CD)による数多くの脂溶性物質の溶解性や吸収性の改善について検討されてきましたが3)、ポリコサノールに関してはほとんど報告されていません。また、脂溶性物質のCD包接体を摂取すると、胆汁中のレシチンや胆汁酸との相互作用により脂溶性物質が効率よく分子ミセルに取り込まれ、吸収効率が高まることが知られています。本研究では、ポリコサノールの経口吸収性の向上を目的として、CDを用いてポリコサノール包接体を作製し、人工腸液におけるポリコサノールの溶解性を評価しました。

実験

2-1. CDを用いたポリコサノール包接体の作製
ビーカーにポリコサノールの固形分濃度が10% となるようにポリコサノールおよびCD(α-CD、β-CDおよびγ-CD)を秤取り、水を加えながら、ホモジナイザーにて90℃で1時間攪拌(6500rpm)した。次に室温で2時間静置後に凍結乾燥した。得られた乾燥物をポリコサノール- CD包接体とした。

2-2. ポリコサノールCD包接体の人工腸液への溶解性試験
バイアル瓶にポリコサノールまたはポリコサノール包接体を量り取り、人工腸液を加えて37℃で1時間振とう後、フィルターろ過した。ろ液中のポリコサノールはGC-FIDにより分析した。

結果と考察

人工腸液におけるポリコサノールの溶解度は、ポリコサノール単独では検出限界以下だったのに対して、ポリコサノールCD包接体では溶解度の向上が確認され、ポリコサノール-α-CD包接体で最も高いポリコサノールの溶解度が示された(図1)。よって、α-CDを用いることでポリコサノールの溶解度を改善し、経口吸収性が向上することが示唆された。

図1. 人工腸液におけるポリコサノールの溶解度
図1. 人工腸液におけるポリコサノールの溶解度

まとめ

ポリコサノール-α-CD包接体は、高い吸収性が期待できるポリコサノール含有素材として、新たな健康食品・飲料の開発にご利用いただけます。

参考文献

1) Sang-Ho Lee et al., International Journal of Sports Physiology and Performance, 14, 1297-1303 (2019).
2) Mahesh K. Kaushik et al., Scientific Reports, 7, 8892 (2017).
3) 大西麻由ら, 第31回シクロデキストリンシンポジウム講演要旨集, 202-203 (2014).