第16回 α-シクロデキストリンと乳酸菌による新シンバイオティクス|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第16回 α-シクロデキストリンと乳酸菌による新シンバイオティクス

目的

シンバイオティクスとは、プロバイオティクス(腸内フローラの制御を通じて有益な影響をもたらす生菌)とプレバイオティクス(腸内でのプロバイオティクスの増殖を促進する物質)の組み合わせのことを指す。単独で用いるよりも腸内細菌叢をより効果的に改善し、健康の維持・増進に寄与する作用が強まることが期待されている。

α-シクロデキストリン(以下、α-CD)は、水溶性の難消化性デキストリンとして「水溶性食物繊維」に分類され、体重減少効果(ダイエット効果)、便秘改善効果、コレステロール減少効果、中性脂肪減少効果、血糖値上昇抑制効果等を持つ機能性食品素材として注目されている。
α-CDは、大腸に到達し善玉菌に選択的に利用されるので、プレバイオティクスとしての条件を満たしている。一方、乳酸菌やビフィズス菌は善玉菌であり、プロバイオティクスとして既によく知られている。通常、プレバイオティクスはプロバイオティクスの餌である。プレバイオティクスが室温条件で、プロバイオティクス存在下においても適度な安定性を有し、体内においてのみ善玉菌の餌となりうるのであれば、同時配合によるシンバイオティクスとしての利用が可能になる。そこで、以下の実験を行った。

培地条件

GYP培地(PH7.0)

  • D-Glucose:2%
  • Yeast Extract:0.5%
  • Polypeptone:1%

YP培地(PH7.0)

  • Yeast Extract:0.5%
  • Polypeptone:1%

YP培地にはグルコースを入れていない為、炭素源は添加したCDのみになる。
→ YP培地で増殖が可能であれば、菌はCDを炭素源にしたと言える。

ヤクルト(株式会社ヤクルト)

菌種:ヤクルト菌(ラクトバシルス.カゼイ シロタ株)

ヤクルト(炭素源はCDのみ)
ヤクルト(炭素源はCDのみ)
ヤクルト(炭素源として、CDにグルコースも共存)
ヤクルト(炭素源として、CDにグルコースも共存)

ブルガリア のむヨーグルト(明治)

菌種:ストレプトコッカス.サーモフィラス菌1131株、ラクトバシルス.ブルガリア菌2038株

ブルガリア(炭素源CDのみ)
ブルガリア(炭素源CDのみ)
ブルガリア(炭素源として、CDにグルコースも共存)
ブルガリア(炭素源として、CDにグルコースも共存)

ビフィズス乳酸菌(カゴメ株式会社)

菌種:ビフィズス菌、ラクトバシルス.カゼイ菌

ビフィズス乳酸菌(炭素源CDのみ)
ビフィズス乳酸菌(炭素源CDのみ)
ビフィズス乳酸菌(炭素源として、CDにグルコースも共存)
ビフィズス乳酸菌(炭素源として、CDにグルコースも共存)

α-CD摂取によるビフィズス菌の増殖効果

α-CDを1日当り3g、3週間摂取すると、便中のビフィズス菌は3倍以上になることが判明した。(n = 10)

ワッカーケミー社内データ

α-CD摂取による排便回数の増加

α-CDを1日当り3g、3週間摂取すると、排便回数は約1.5倍になる。(n=10)

ワッカーケミー社内データ

結論と考察

  • 炭素源としてグルコースがない培地でも、ヤクルト菌の様にシクロデキストリンを栄養源とできる菌なら増殖が可能である。α-CD添加培地での増殖が最も遅く、α-CDは資化されにくいことが判明した。
  • グルコース存在下ではグルコースを栄養源として増殖する。α-CDを添加することで増殖は遅くなる。
    → 乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌共存下、或いは、善玉菌とグルコース共存下、α-CDは他のプレバイオティクスより安定である。
  • ワッカーケミー社が実施した臨床試験で、α-CD摂取で便中のビフィズス菌量が3倍以上に増加し、排便回数が増加する事も判明している。
    → 様々な有機物と細菌が存在する腸内環境下で、最終的に、α-CDは腸内でゆっくりと資化され、善玉菌の栄養源になると考えられる。
    → プレバイティクスであるα-CDはシンバイオティクス原料として有用である。