第29回 ビタミンE添加によるアスタキサンチンγ-CD包接体のDPPHラジカル消去活性向上
緒言
カロテノイドの一種であるアスタキサンチンは、一重項酸素消去や脂質過酸化抑制等の強い抗酸化活性を有し、水産・畜産だけではなく、健康・美容分野においても注目されている素材である1)。生体内では遊離型、モノエステル型、ジエステル型の3形態で存在することが知られている。一般にはヘマトコッカス藻からの抽出油として使用されているが、油状物質のため取り扱い難さや抗酸化能力・酸素に対する安定性の問題が指摘されている。一方で、ビタミンEはフリーラジカルを消去し、過酸化脂質の生成を抑制する働きがあり、抗酸化物質として幅広く使用されている。これらの点に着目し、我々はアスタキサンチン含有油にビタミンEを添加しγ-CDで粉末化することにより、アスタキサンチンの安定性が改善されることを見出している2)。そこで本研究では、アスタキサンチン含有油とビタミンEの各々を単独あるいは混合物でγ-CD包接し、抗酸化活性向上をDPPHラジカル消去活性にて詳細調査した。
1) 矢澤一良, 「アスタキサンチンの科学」, 成山堂書店(2009).
2) 中田大介, 上梶友記子, 岡村敏宏, 冨田 学, 寺尾啓二, 第25回シクロデキストリンシンポジウム講演要旨集, 176-177 (2007).
アスタキサンチン抽出油
H.pluvialisは、ストレス環境下では強固な細胞壁を持った休眠状態であるシスト(Cyst)に形態変化する。シストは休眠期間中に受けるストレスによって発生するラジカルから身を守るための物質として、多量のアスタキサンを蓄積する。
アスタキサンチン蓄積量の増大に伴い、緑色から次第に鮮やかな赤色になる。ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチンは、通常このシストから抽出される。
アスタキサンチンの分布
アスタキサンチンの抗酸化作用
アスタキサンチンは膜全体で抗酸化力を発揮することから他の抗酸化物質よりも優位に働く
矢澤一良, 「アスタキサンチンの科学」,
成山堂書店 (2009).
アスタキサンチンの用途
アスタキサンチンは、従来の水産・畜産分野だけでなく、ヒトの健康と美容の分野においても、現在最も注目されているカロテノイドである。
DPPHラジカル消去活性(抗酸化活性)
特にγ-CD包接体で活性が向上!
包接化処理した化合物を[ ]にて示す
γ-CD包接体の抗酸化活性における相乗効果
AXとVEをγ-CD包接体として混合すると抗酸化活性が相乗的に向上!
包接化処理した化合物を[ ]にて示す