研究成果
第44回 α-シクロデキストリンによる コレステロール低減効果機構の解明
本研究結果は、2012年9月7日(金)、第29回シクロデキストリンシンポジウム(9/6~7、星薬科大学(東京)にて開催)において発表しました。
α-CD摂取効果 - 過去の知見と課題 -
α-CDの摂取による血中コレステロール低減効果が報告されている。
一方で、α-CDとコレステロールは相互作用しないことが知られている。
↓
α-CDはコレステロールの吸収阻害に間接的に働いている?
脂質の小腸吸収
摂取した脂質の吸収性には、胆汁酸ミセルへの取り込みが重要
胆汁の構成成分
胆嚢胆汁 | |
---|---|
胆汁酸(mM) | 72.1(68%) |
レシチン(=リン脂質)(mM) | 25.8(23%) |
コレステロール(mM) | 8.1(7.6%) |
水分(%) | 84 |
「胆汁酸と胆汁」創英社
胆汁の成分の内、α-CDと結合できるのはレシチンのみ。
仮説
摂取したα-CDは腸内で胆汁酸ミセル中のレシチンと結合する。
↓
胆汁酸ミセルの性質が変化
↓
脂質が胆汁酸ミセルに取り込まれにくくなる。
↓
脂質の吸収性が低下する。
本研究
人工腸液中に対するα-CDの添加効果について、
- α-CDとレシチンとの結合
- α-CD存在下における人工腸液への脂質の溶解性
について検討を行った。
人工腸液
脂溶性薬剤の小腸吸収予測モデル
Fig. 1. α-CDによる人工腸液の濁度上昇
振とう2時間後の人工腸液の濁度
人工腸液にα-CDを加えると沈殿物ができる。
Fig. 2. α-CDとレシチンとの結合
α-CD添加時(3%)の人工腸液
レシチンとα-CDが存在する場合のみに析出物が生成する。
→ α-CDは人工腸液中のレシチンと結合している。(析出物はα-CD-レシチン包接体)
Fig. 3. コレステロールの溶解性試験
α-CDは、コレステロールの溶解性を低減させた。
まとめ
α-CDは胆汁酸ミセルからレシチンを析出させ、小腸液における脂質の溶解性を低下させた。
α-CD摂取による血中コレステロール低減効果について、その機構の一つが明らかとなった。