第46回 ウルソール酸の水溶性向上のためのシクロデキストリンの利用
本研究成果は、2012年9月7日(金)、第29回シクロデキストリンシンポジウム(9/6~7、星薬科大学(東京)にて開催)において発表しました。
背景
当社ではシクロデキストリン(CD)の包接機能を利用して、機能性成分の水溶性、安定化、バイオアベイラビリティなどを向上させる技術を有しております。それらの成果は化粧品、食品等の様々な分野で広く利用されています。最近ではCDと界面活性剤を併用することでCoQ10、クルクミンといった特に脂溶性が高い物質でも水溶液を作成できる技術を確立しました(※詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第25回」、「第32回」を参照して下さい)。 今回、上記の可溶化技術の応用として、ウルソール酸の水溶化について研究を行いました。
ウルソール酸(UA)は、機能性トリテルペンとも呼ばれ、健康食品分野のみならず、化粧品分野においても非常に魅力的な素材とされています。しかしながら、UAの利用はその難水溶性およびバイオアベイラビリティの低さが課題となっています。本研究ではCDを用いたウルソール酸のバイオアベイラビリティ向上を目的とし、UAのCD包接体(UA-CD)の作成および水溶化について検討を行いました。
ウルソール酸
本研究
ウルソール酸(UA)の利用にはその難水溶性およびバイオアベイラビリティの低さが課題となっています。そこで本研究ではシクロデキストリン(CD)を用いたUAのバイオアベイラビリティ向上を指向して、UA-CD包接体の作成およびそれらの水溶性を評価しました。
UA-CD包接体の作成
Fig. 1. UA-CD包接体 DSC
→ UA-β-CDおよびUA-γ-CDにおいてDSCピークが観測されず、包接体であることが示唆された。
胆汁酸によるCD包接物質の可溶化
一般的に、摂取された脂溶性物質は腸内で胆汁酸ミセルに取り込まれて体内に吸収されます。
当社の研究から、脂溶性物質がCD包接されると、非常に効率良く胆汁酸ミセルへ取り込まれバイオアベイラビリティも向上することが明らかとなっています。
胆汁酸によるCD包接物質の可溶化
Fig. 2. UA-CD包接体の腸液に対する溶解度
実験
2mlのミリQ水もしくは1%NaTC水溶液(モデル腸液)の入ったバイアル瓶に、ウルソール酸-SSもしくは-CD粉末を10mgを加え、15分間超音波照射を行った後、フィルターろか(0.2mm)により得られた溶液中のウルソール酸の濃度をHPLC分析により測定した。
まとめ
ウルソール酸の水溶性改善についてシクロデキストリンの効果を検討した。
- β-CDおよびγ-CDを用いてUAの包接体粉末が作成できた。
- UA-γ-CD包接体は、モデル腸液に対してUA単独よりも高い溶解性を示した。
→ γ-CD包接によりUAのバイオアベイラビリティーを向上させることができる。