第89回 苦丁茶抽出物中-γ-シクロデキストリン複合体粉末(苦丁茶CD粉末)の開発検討|株式会社シクロケムバイオ
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研究成果

第89回 苦丁茶抽出物中-γ-シクロデキストリン複合体粉末(苦丁茶CD粉末)の開発検討

概要

苦丁茶(Ilex kudingcha)の葉には機能性トリテルペンであるウルソール酸(UA)(図1)が含まれており1)、UAの効果としては脂質異常症改善効果、筋肉増加効果といった様々な機能性効果が報告されていることから2)、UAの摂取によるロコモティブシンドロームやサルコペニアの予防が期待できます。しかしながらUAは難水溶性であるため一般的な健康茶としての飲用方法では茶葉からは殆ど抽出されないことに加え、吸収性が低いことも問題となっています。さらに苦丁茶はその名の通り非常に強い苦味を特徴としています。苦丁茶の苦味はトリテルペンサポニンに由来し、これらはγ-シクロデキストリン(γ-CD)によりマスキングすることができます(詳しくは、当社ホームページの最新研究成果の第15回を参照して下さい)。
そこで当社では、高い吸収性を示すUA含有素材として、UAを含有する苦丁茶抽出物とγ-CDとの複合体粉末「苦丁茶CD粉末」を開発しました。
本検討では、ラットに苦丁茶CD粉末を経口投与し、UAの吸収性について評価しました。

図1. ウルソール酸の構造と健康増進効果
図1. ウルソール酸の構造と健康増進効果

実験

6週齢のSDラット(雄性)を1週間の馴化および一晩絶食させた後、UA量として13mg / Kg b.w.となるよう、苦丁茶抽出物もしくは苦丁茶CD粉末を経口投与した。投与後、0、1、2、4、6、24時間後にイソフルラン麻酔下で頸静脈より採血し、血漿中のUA量を固相抽出した後にLC-MSにて測定した。

結果・考察

苦丁茶CD粉末を経口摂取したラットの血漿中UA濃度は、苦丁茶抽出物を投与した群と比較して有意に高い値となった(図2)。γ-CDに包接されることで、コエンザイムQ10やクルクミンといった難水溶性物質が小腸内において効率よく胆汁酸と相互作用し、経口摂取であっても未包接の場合よりも高い吸収性を示すことが知られている3) 。よって本検討においてもγ-CDによる包接が難水溶性物質であるUAの吸収性を高めていると考えられた。

図2. 苦丁茶CD粉末を経口投与したラットの血漿中ウルソール酸濃度
図2. 苦丁茶CD粉末を経口投与したラットの血漿中ウルソール酸濃度

まとめ

苦丁茶CD粉末は、苦丁茶抽出物の苦味がマスキングされており、飲みやすい粉末として利用することができます。また、ウルソール酸はさまざまな健康増進作用を有していますので、吸収性の高いウルソール酸を含有する本素材は、新たなサプリメントやドリンクの開発にご利用いただけます。

参考文献

1) Li. L., et al., J. Nat. Med., 67, 425-437 (2013).
2) Seo. DY., et al., Korean J Physiol. Pharmacol, 22, 235-248 (2018).
3) Uekaji. Y., et al., Bio-Nanotechnology: A Revolution in Food, Biomedical and Health Sciences. U. K., Wiley & Sons, 179-211 (2013).