第90回 還元型コエンザイムQ10の安定性におけるγ-シクロデキストリンとビタミンCとの併用効果|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第90回 還元型コエンザイムQ10の安定性におけるγ-シクロデキストリンとビタミンCとの併用効果

概要

コエンザイムQ10は生体内でエネルギー産生に関与する重要な補酵素であり、酸化型(CoQ10)と還元型(CoQ10H, 図1)が存在します。しかしながら機能性食品素材としてコエンザイムQ10を摂取する際には、その難水溶性に伴う生体吸収性の低さが課題でありました。そこで当社ではγ-シクロデキストリン(γ-CD)を用いた包接技術により、CoQ10の低い生体吸収性を大幅に高めることに成功しました(詳しくは、当社ホームページの最新研究成果の第54回を参照して下さい)。
CoQ10Hは強い抗酸化作用を有し、様々な生理機能に関わっています。近年ではCoQ10Hの抗疲労効果1)に基づいた機能性表示食品なども市場でみることができます。しかしながら、CoQ10Hは非常に酸化しやすく、取扱いが困難であることが課題とされています。そこで本研究では、CoQ10Hの酸化に対する安定性と生体吸収性を高めることを目的に、γ-CDによる包接化およびビタミンCとの併用効果について、また生体吸収性の指標となる人工腸液へのCoQ10Hの溶解性について検討しました。

図1. 還元型コエンザイムQ10(CoQ10H)の構造
図1. 還元型コエンザイムQ10(CoQ10H)の構造

実験

窒素雰囲気下CoQ10H、γ-CDおよび水を混合し、常法に従ってCoQ10H- γ-CD包接体を得た。さらにこの包接体にビタミンCを加えた粉末を作製した。得られた粉末について室温・空気中・遮光条件における保存安定性を評価した。定量にはHPLCを用い、酸化型と還元型CoQ10を足した総CoQ10量に対するCoQ10Hの割合を算出した。また、包接体を人工腸液(FeSSIF)に添加し、37℃で振とうした際の総CoQ10としての溶解性をHPLC分析にて評価した。

結果・考察

CoQ10Hの保存中の酸化に対する安定性について、CoQ10HのみやCoQ10H にビタミンCを添加した粉末と比較して、CoQ10H-γ-CD包接体の場合で安定性が向上し、CoQ10H-γ-CD包接体にさらにビタミンCを添加した場合では、約1か月間の保存でもCoQ10Hはほとんど酸化せず、非常に高い安定性が示された(図2)。

図2. 還元型コエンザイムQ10の安定性におけるγ-シクロデキストリンとビタミンCとの併用効果
図2. 還元型コエンザイムQ10の安定性におけるγ-シクロデキストリンとビタミンCとの併用効果

次に、人工腸液に対するCoQ10の溶解性について、CoQ10Hの場合では人工腸液にはほとんど溶解しないのに対し、CoQ10H-γ-CD包接体の場合で非常に高い溶解性が示され、CoQ10H-γ-CDにビタミンCを加えた場合にさらに高い溶解性を示した(図3)。

図3. コエンザイムQ10の人工腸液への溶解性におけるγ-シクロデキストリンとビタミンCとの併用効果
図3. コエンザイムQ10の人工腸液への溶解性におけるγ-シクロデキストリンとビタミンCとの併用効果

まとめ

CoQ10H-γ-CD包接体とビタミンCとを組み合わせた粉末は、1)酸化しにくく2)高い吸収性が期待できる新たな還元型CoQ10素材として、今後の健康食品の開発にご利用いただけます。

参考文献

1) 出口祥子ら, 臨床医薬, 24, 233−238 (2008).