第97回 モノクロロトリアジノ化β-シクロデキストリンとポリエチレンイミンを用いた繊維加工に関する検討|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第97回 モノクロロトリアジノ化β-シクロデキストリンとポリエチレンイミンを用いた繊維加工に関する検討

概要

近年、クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)の向上志向に伴い、冷・温感性、消臭性、吸水速乾性、抗菌性、制電性などの快適性を持たせた繊維の開発が活発になされています。当社では、反応性のシクロデキストリンであるモノクロロトリアジノ化β-シクロデキストリン(MCT-β-CD、図1)を用いて加工した繊維による悪臭成分の消臭や、冷感成分であるメントールの保持について報告しています(詳しくは、当社ホームページの研究成果の「第39回」を参照して下さい)。また最近では、MCT-β-CDとポリアリルアミンとの架橋反応を利用し、常温でも繊維表面にCDを固定化できる簡便な方法を開発しました1)。そこで本研究ではPAAと同様にポリアミンであるポリエチレンイミン(PEI)を用い、MCT-β-CDとの組み合わせによる繊維加工について検討しました。

図1. MCT-β-CDの構造
図1. MCT-β-CDの構造

実験

MCT-β-CDとPEIの混合水溶液を作製した。次に、この水溶液を入れた容器にPET布を浸して取り出した後、室温または120℃にて固定化処理を行った。その後、得られた布を洗浄、乾燥することにより加工布とした。また加工前後のPET布の重量変化から固定化量を算出した。

結果と考察

PET布におけるMCT-β-CDとPEIの固定化処理について、室温または120℃の条件でPET布の重量増加が示され、室温と比較して120℃の条件でより短い時間で固定化が進むことがわかった(図2)。

図2. PET布に対するMCT-β-CDとPEIの固定化
図2. PET布に対するMCT-β-CDとPEIの固定化

まとめ

本検討から、MCT-β-CDとPEIは1つの浸漬液中で混合でき、室温でもPET布への固定化ができること、加熱した場合は加工時間を短縮できることがわかりました。新たな機能性繊維の開発におけるMCT-β-CDとポリアミンの加工について、PAAと同様にPEIが適用可能であることが示されました。

参考文献

1) 秋田知己, 吉田佳珠, 石田善行, 寺尾啓二, 科学と工業, 92(5), 124-129 (2018).