第99回 α-シクロデキストリンによる酸化コレステロールの溶解性低減効果
概要
近年、食の欧米化に伴い、酸化コレステロールを含有する食品を摂取する機会が多くなりました。酸化コレステロールには、生体内で生成する内因性と、食事に由来する外因性がありますが、いずれもアテローム性動脈硬化発症と関連があることが報告されています1)。
コレステロールなどの脂質は腸内において腸液中のミセルに取り込まれることによって体内に吸収されます。当社では、水溶性食物繊維であるα-シクロデキストリン(α-CD)が腸液中のミセルに含まれるレシチンを選択的に析出させ、コレステロールの腸液への溶解性を低減させることを報告しています(詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第44回」を参照してください)。
そこで本研究では、酸化コレステロール(図1)の人工腸液への溶解性に対するα-CDの添加効果について検討を行いました。
実験
人工腸液(FeSSIF)に酸化コレステロール(5α,6α-Epoxycholesterol(EC)、7-Ketocholesterol(KC)、25-Hydroxycholesterol(HC) 0.5mg/mLを溶解した後、α-CD溶液を加えて、37℃、150rpmにて2時間撹拌した。攪拌後、遠心分離およびフィルターろ過を行い、ろ液を酢酸エチルで分配し、酢酸エチル層の各種酸化コレステロール濃度を分析した。また、同様の試験をα-CD以外の水溶性食物繊維を用いて行った。
結果と考察
ECの人工腸液への溶解性に対するα-CD添加の影響を評価した結果、α-CD 4%以上の添加条件において、ECの溶解性は有意に低減した(図2)。
次に、KCまたはHCの溶解性に対する6% α-CDの添加効果を評価した結果、いずれにおいても溶解性の低減が認められた(図3、4)。
今回の結果は、α-CDがFeSSIF中のレシチン析出作用を介して酸化コレステロールの溶解性を低減させている可能性が示唆された。
最後に、ECの溶解性に対する他の水溶性食物繊維の影響について評価したところ、α-CD以外の水溶性食物繊維では、溶解性低減効果は認められなかった(図5)。
まとめ
本研究から、α-CDの摂取により酸化コレステロールが関連するアテローム性動脈硬化症の予防が期待されます。加えて、α-CDの摂取は、腸内細菌叢の改善を介して、アテローム性動脈硬化症の予防効果が報告されています2)。そのため、α-CDは食物繊維作用とプレバイオティクス作用という二つのメカニズムから、アテローム性動脈硬化症を予防できる唯一の素材として、健康を支える新たな製品開発にご利用いただけます。
参考文献
1) Staprans I. et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol, 20:708-714 (2000).
2) Sakurai T. et al., Mol Nutr Food Res, 61:1600804 (2017).