第105回 プレバイオティクスとしてのα‐シクロデキストリン① ~酪酸菌~|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第105回 プレバイオティクスとしてのα‐シクロデキストリン① ~酪酸菌~

概要

体の免疫細胞の70%は腸に存在していると言われていますが、近年、腸内で作られた酪酸が免疫機能を制御することが発見されたため1)、酪酸を作る菌、酪酸菌が注目されるようになりました。
酪酸菌(Clostridium butyricum)は、ヒトの糞便から分離された菌株で、プロバイオティクスとして医薬品や食品などに利用されています。この酪酸菌は芽胞形成能を有する偏性嫌気性菌であるため、食品中や経口摂取後の胃、小腸でも安定な状態で生存し、酸素が少ない大腸で発芽して活動します。そして、酪酸菌は大腸内で糖質(プレバイオティクス)をエネルギー源として増殖し、その際に糖質は酪酸に変換されます。
α-シクロデキストリン(αCD)は難消化性糖質であるため、腸内で善玉菌のエサとなることが知られています(※詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第85回」を参照して下さい)。そこで、本研究では、酪酸菌に対するプレバイオティクスとしてα-CDと他の難消化性糖質との比較検討を行いました。
そこで、本研究では、酪酸菌が栄養源として利用しやすく、かつ酪酸を作りやすいプレバイオティクスについて検討しました。

実験

資化性試験
資化性試験用培地として、GAM糖分解用半流動培地「ニッスイ」を用いた。難消化性糖質を1%添加した資化性試験用培地4mLに前培養した菌液を40μL接種し、37℃、嫌気下で20時間培養後、濁度(660nm)、pH(ツーバンド試験紙)、短鎖脂肪酸量(誘導体化してGC-FID)を測定した。難消化性糖質として、α-シクロデキストリン(α-CD)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、フラクトオリゴ糖(FOS)、難消化性デキストリン(ID)、イソマルトデキストリン(IMD)、イヌリン(INL)、ポリデキストロース(PDX)、グァーガム分解物(PHGG)、乳果オリゴ糖(LS)を用い、ポジティブコントロールとしてグルコース(Glc)を用いた。

結果と考察

3-1. 酪酸菌の増殖性
α-CDを添加した培地の場合、他のプレバイオティクスと比べて培養液の濁度が最も上昇し、菌の増殖促進が示された。このことから酪酸菌はα-CDをエネルギー源にしやすいことが示唆された。

3-2. 酪酸の産生量とpH
α-CDを添加した培地の場合、他のプレバイオティクスと比べて培地中の酪酸の濃度が最も高かった、このことはα-CDによる酪酸菌の増殖促進に依存していることが示唆された。また、α-CDを添加した培地では酪酸濃度の上昇に伴い培地のpHが最も低値を示した。

まとめ

本研究から、α-CDは他のプレバイオティクスよりも酪酸菌のエネルギー源になりやすく、それに伴い酪酸産生量が高まることが明らかになりました。よってプレバイオティクスとしてのα-CDと酪酸菌との組み合わせは、新たなシンバイオティクス製品として免疫機能の向上をはじめとする高い健康増進効果が期待できます。

参考文献

1) Y Furusawa, et al., Nature 10.1038 (2013).