米ぬか成分のフェルラ酸による日焼け止め作用とシクロデキストリンによる効能改善
ここでは、米糠の中にあるフェルラ酸というポリフェノールの日焼け止め効果について、もう少し掘り下げて説明し、シクロデキストリンによる包接化がフェルラ酸の日焼け止め効果を引き出すために有効な方法であることを突き止めた論文を紹介します。
その前に、先ずは紫外線防御剤についてのまめ知識です。
紫外線から肌を防御する素材、いわゆる、日焼け防止剤には桂皮酸誘導体を代表とする紫外線吸収剤や酸化チタンを代表とする紫外線散乱剤があります。 紫外線吸収剤は伸び広がりが大きく、防止効果は高いのですが、肌の弱い人にとっては、かぶれや肌荒れが起きる危険性があります。一方で、紫外線散乱剤は肌の弱い人でも安心なのですが、粉っぽさや青白さが出てしまうため、見た目の問題があります。そこで、双方を組み合わせて配合し、デメリットを少なくメリットを引き出した日焼け止め製品も多くみられます。
紫外線吸収剤は人工的な有機合成物質がほとんどです。でもその中で唯一の天然素材があります。それが米糠由来のフェルラ酸なのです。その点では、他の吸収剤と比較して肌の弱い人にも安心・安全な素材としてみることができます。ただ、一方で、たとえ天然のフェルラ酸であっても、抗酸化作用を持つ紫外線の吸収剤としてみた場合、紫外線を吸収してエネルギーを蓄えた酸化物質に変換されると効能は消失し、肌に影響がまったくないとは言い切れません。
そこで、紫外線吸収剤は他の表皮や真皮においてシミ、ソバカス、しわ、たるみなどの改善に効果のあるコエンザイムQ10、R-αリポ酸、トコトリエノールといった抗酸化物質とは異なり、皮膚深く(表皮や真皮)まで浸透するのではなく、肌表面に留めることが重要なのです。そこで、フェルラ酸を日焼け防止のために使用する目的で浸透ではなく保持と適度な徐放を目指し、α-シクロデキストリン(α-CD)包接し、ヘアレスラット皮膚を用い、異なる化粧品製剤におけるフェルラ酸の皮膚への透過と分布を評価した研究があります。
この研究はイタリアのMontiらによって論文化されていますので、ここではその内容を紹介します。(American Association of Pharmaceutical Scientists, 12(2), 514-520, (2011) )
日焼け止め製品にもスプレー、ジェル、乳液、ローション、クリーム等、さまざまな種類がありますが、この検討では、代表的なジェルとエマルジョンで評価がされております。フェルラ酸を3%配合したジェル、フェルラ酸のα-CD包接体(1:1)をフェルラ酸量で同じく3%配合したジェル、同様に、フェルラ酸とフェルラ酸α-CD包接体を同量配合したエマルジョン(W/O)で24時間後の皮膚透過性を比較しています。(図1)尚、分析は透過試験に用いた皮膚からフェルラ酸を抽出しHPLCでの評価です。
その結果、フェルラ酸をCDで包接することによってジェルでもエマルジョンでもその透過量は抑えることができること、そして、その効果はジェルの方が大きいことが判明しました。すなわち、日焼け止め目的の化粧品には、天然の紫外線吸収剤であるフェルラ酸をCDで効果的な保持・徐放が可能であることがわかりました。
尚、フェルラ酸はビタミンEとビタミンCを同時に配合するとその抗酸化物質としての安定性も高まり、より効果的なことがわかっています(コラム参照)。
コラム
ビタミンC+ビタミンE+フェルラ酸(CEFer)溶液は、紫外線によって起こる皮膚の日焼けを抑えることが判明したとの報告がある。(図2)
試験方法: CEFer溶液を塗布した皮膚にUVを照射し、日焼け細胞(SBC)の量を計測したところ、未塗布部分よりも、CEFer溶液を塗布した部分は、SBCの量が抑えられている。フェルラ酸によって安定化されたVCとVEの抗酸化作用と、フェルラ酸の紫外線吸収能の効果だと考えられる。
コラム
ビタミンC+ビタミンE+フェルラ酸(CEFer)溶液は、紫外線によって起こる皮膚の日焼けを抑えることが判明したとの報告がある。(図2)
試験方法: CEFer溶液を塗布した皮膚にUVを照射し、日焼け細胞(SBC)の量を計測したところ、未塗布部分よりも、CEFer溶液を塗布した部分は、SBCの量が抑えられている。フェルラ酸によって安定化されたVCとVEの抗酸化作用と、フェルラ酸の紫外線吸収能の効果だと考えられる。