オリーブから生まれた抗酸化物質HTS、ヘアケアで注目!|株式会社シクロケムバイオ
株式会社シクロケムバイオ
日本語|English
研究情報
今、注目していること

オリーブから生まれた抗酸化物質HTS、ヘアケアで注目!

オリーブオイルに含まれる抗酸化物質ヒドロキシチロソール(HTS)をご存知ですか?

オリーブには、健康に有用な不飽和脂肪酸である、オレイン酸が含まれていますが、そのオレイン酸を守るための抗酸化作用物質がHTSです。

現在までに、HTSには抗酸化作用のみならず、動脈硬化の予防機能、血管平滑筋細胞の増殖や遊走に対する抑制作用、血管内皮細胞に対する創傷治癒効果、酸化ストレスに対する細胞保護、抗炎症、抗菌作用などがあることも判明し、さらには、美白効果、抗インフルエンザ作用も明らかとされています。

そして、特に、今、注目されているのがヘアケアへの利用なのです。

ヘアケアへの検討の前に、まず、抗酸化物質の抗酸化能を比較するために、DPPHラジカル消去能、及び、反応速度での検討を紹介します。この検討では、ラジカルとの反応が速い活性成分が、より優れた抗酸化能を有することになります。その結果、HTSが他の抗酸化物質のビタミンCやビタミンE、緑茶、紅茶と比較して、ラジカル消去反応は速く、高い抗酸化能を示すことが明らかとなりました。このように、HTSはビタミンCの1.5倍、ビタミンEの4倍の抗酸化能を示しています。

図1. DPPHによる各種抗酸化物質の抗酸化能の比較
図1. DPPHによる各種抗酸化物質の抗酸化能の比較

次に、皮膚に塗布した後の抗酸化能活性に対する経時変化を、ビタミンE1%配合した製剤とHTSを、その10分の1の0.1%配合した製剤で、TEMPOによるESR分光分析評価法によって比較しています。その結果、皮膚抗酸化活性(%)は、ビタミンEよりも4倍以上持続することが確認できました。

図2. 皮膚塗布後の抗酸化能活性に対する経時変化の比較
図2. 皮膚塗布後の抗酸化能活性に対する経時変化の比較

ここで、HTSの抗酸化システムについて、図3を用いて簡単に説明しておきます。通常、紫外線等で発生するフリーラジカルは、皮膚の細胞膜を構成しているリン脂質を破壊し、炎症促進物質が発生します。この炎症が肌老化の原因の1つとして考えられています。その炎症によって、さらに、フリーラジカルが発生するという悪循環となるわけですが、このフリーラジカルを効率よく消去するのがHTSなのです。

図3. ヒドロキシチロソールの抗酸化システム
図3. ヒドロキシチロソールの抗酸化システム

では、ヘアケアに関する検討です。HTSが他の抗酸化物質と比較して、紫外線による髪のダメージと変色を防ぐ効果を持っていることが明らかとなっています。

そもそも、髪や肌の中のメラニンは、紫外線によって発生するフリーラジカルから肌を防御するために存在するものです。太陽光、紫外線を多く受けると肌の色が黒くなるのは、メラニンによって肌を防御しているためです。

フリーラジカルは、メラニンと結合して、メラニンの酸化反応が起こります。その酸化反応は髪の質や色に影響を与えるのです。

そこで、HTSによる髪の保護効果を検証しました。図4に示すように、白人の毛髪を水の入った試験管とHTSを0.5%含有している水の入った試験管に入れます。20分間浸透させた後、紫外線照射を行いました。

図4. HTSによる髪の保護効果の検討方法
図4. HTSによる髪の保護効果の検討方法

20分間HTSを0.5%含有する水に浸透させた髪の紫外線ダメージは殆ど無く、HTSが高い髪の保護作用を持っていることが図5から分かります。数値化したグラフを図6に示しますが、緑茶と比較して3倍の効果、そして、ビタミンCよりも高い効果を示しています。尚、ビタミンCも髪の保護作用は有しているのですが、不安定で、かつ、酸性であるため、ヘアケア製品への応用には適していません。

図5. HTSによる紫外線からの髪の保護効果
図5. HTSによる紫外線からの髪の保護効果
図6. 紫外線からの髪の保護効果におけるHTSと他の抗酸化剤との比較
図6. 紫外線からの髪の保護効果におけるHTSと他の抗酸化剤との比較

以降、パーソナルケア製品を開発している会社の研究者への情報をお伝えしておきます。HTSをヘアケア製品として開発する際には、β-CDとの組み合わせが、さらにHTSの抗酸化活性を高め、その活性を維持するためには有効であることが分かっています。

図7に示しますように、二次元ROESYスペクトルによって、HTSはβ-CDと1:1の包接体を形成していることが明らかとなっています。

図7. HTS-β-CD包接複合体(1:1)の推定構造
図7. HTS-β-CD包接複合体(1:1)の推定構造

CD単独では、DPPHとの反応に影響しないため、DPPHの吸光度に変化はありません。一方、包接化されたHTSは、未包接のHTSに比べ、DPPH吸光度の減衰が緩やかであることが分かります。

図8. HTS-β-CD包接体の抗酸化活性(DPPH吸光度の減衰)
図8. HTS-β-CD包接体の抗酸化活性(DPPH吸光度の減衰)

さらにHTSに対するβ-CDの比率が高まると、抗酸化活性も向上することが示されています。

図9. HTS-β-CD包接体の抗酸化活性
図9. HTS-β-CD包接体の抗酸化活性

HTS-β-CD包接体をヘアケア製品開発に検討してみませんか?