プロポリスを超えられるのはマヌカハニーだけではない?
以前、「マヌカハニーはプロポリスを超えられる?」というタイトルでニュージーランド学会での発表要旨を紹介しました。プロポリスとマヌカハニーやマヌカハニーのαオリゴ糖粉末(MAP)の抗がん活性を比較し、乳がんや大腸腺がんにおいてマヌカハニーの方がプロポリスよりも勝っているので、味覚でも勝っているマヌカハニーはプロポリスの市場を越える可能性があるのでは、といった内容でした。
この学会発表は未だに論文化されていないのですが、そのような中、マレーシアの研究グループがマレーシアで採れるトアランハニー(TH)とマヌカハニー(MH)の乳がんに対する抗がん活性を評価した学術論文が発表されました。(Hindawi Evidence-Based Complementary and Alternative medicine Volume 2017, Article ID 5904361, 15 pages)
乳がんは肺がんに次いで2番目に多いがんにされていますが、マレーシアでは年齢調整罹患率において乳がんがトップになっていることから、ハチミツの効果効能を調べたようです。
THはマレーシア熱帯雨林のトアランの木に巣を作るオオミツバチによって作られるマルチフローラルジャングルハニーです。
では、まず、検討方法です。40日齢のSDラットの雌に発がん物質である1-methyl-1-nitrosoureaを80mg/kgを腹腔内投与し、10匹ずつ、4グループに分けて育てました。4グループとは、ネガティブコントロール群(発がん物質もハチミツも投与していない群)、ポジティブコントロール群(発がん物質だけを投与した群)、TH投与群(発がん物質とTHを投与した群)、MH投与群(発がん物質とMHを投与した群)です。
そして、触診可能な腫瘍が10~12mmに達したところで1.0g/kg・bw/日のハチミツを投与しました。期間は120日です。
その結果、図1に示すように、腫瘍サイズはポジティブコントロールで増加し、TH投与でもMH投与でも減少は確認されました。そして、THでより強い減少が観られました。
ここでは一見THの方が抗腫瘍効果は高いように思われます。しかし、別の考察があります。ハチミツには成長促進作用があり、16週間後のハチミツを摂取していないポジティブコントロールに比べ、ハチミツ投与群(TH投与群とMH投与群)は明らかな体重増加が確認できます。そして、その体重変化率はMH投与群で最も大きいこと、つまり、成長促進作用の強いことが分かりました。
そこで、16週目の体重から腫瘍体重を差し引いた実体重の変化率を調べたところ、TH投与群とMH投与群のどちらもポジティブコントロール群に比べ変化率は大きかったのですが、やはり、MHでより強い効果が観られました。
この結果からMHとTHには腫瘍サイズの増加を抑制する効果があると同時に、腫瘍があるものの成長促進効果があり、それはMHでより顕著であることが判ります。
さらに、この論文ではアポトーシス促進性タンパク質と抗アポトーシスタンパク質を評価しています。
アポトーシスというのは生物を構成する細胞が自分の役目を終え、不要になったときに自ら死ぬ(自殺)細胞死のことをいいます。つまり、アポトーシス促進性タンパク質とは、がん細胞の細胞死を促進するタンパク質であり、抗アポトーシスタンパク質とはがん細胞の細胞死を抑える役目をするタンパク質です。
まず、アポトーシス促進性タンパク質のApaf-1は内在性アポトーシス経路ではたらく因子ですが、Apaf-1はポジティブコントロール群に比べ、ハチミツ投与群の増加することが確かめられています。同様に、INF-γは免疫強化因子であり、内在性アポトーシス経路を活性化しますが、INF-γもポジティブコントロール群に比べ、ハチミツ投与群で増加しています。
一方、抗アポトーシスタンパク質であるTNF-αは単球で生成され、腫瘍グレードの上昇や転移性行動に関係する因子ですが、TNF-αはポジティブコントロール群に比べ、ハチミツ群で減少することが確かめられています。同様に、エストラジオールは乳がん患者の血清中量が高いことが知られており、直接的に遺伝子発現を調節することで、アポトーシスを抑制しますが、エストラジオールもポジティブコントロール群に比べ、ハチミツ投与群で減少しています。
以上のことから、この論文でハチミツのTHとMHはともにがん細胞の細胞死を促進させることが明らかとしています。