難消化性αオリゴ糖のちから(1)難消化性オリゴ糖の種類|株式会社シクロケムバイオ
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難消化性αオリゴ糖のちから(1)難消化性オリゴ糖の種類

難消化性オリゴ糖には『血糖値の上昇抑制』、『中性脂肪・コレステロールの低減効果』、『痩身作用』、『腸活による効果(便秘改善作用、美肌作用、抗アレルギー作用)』など数多くの健康増進効果のあることが知られています。その中の『腸活』についてです。

今やだれもが聞いたことがある美と健康のための『腸活』。

『腸活』とは、いつまでも美しく健康でいるためにお腹を元気にする活動のことですが、ここでは、難消化性αオリゴ糖の『腸活』効果について取り上げます。

『腸活』は大きく分けて、腸内の善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスを摂取する方法とそれら善玉菌の餌となり、善玉菌を増やすプレバイオティクスを摂取する方法の二つあります。ここでは、研究報告データに基づいて、様々なプレバイオティックスを比較し、プレバイオティックスの中でも最も有力な『腸活』パワーをもつ難消化性αオリゴ糖について紹介します。このシリーズを最初から最後まで通して読んでいただいた読者の方々には、難消化性αオリゴ糖が“スーパー難消化性デキストリン”と呼ばれていることに納得していただけると信じています。

オリゴ糖とは単糖が数個結合した糖類のオリゴマーのことを言います。オリゴはギリシャ語で『少し』を意味し、その糖類ですので少糖類と呼ぶこともあります。そして、現在、工業生産されているオリゴ糖は20種類以上あります。そのオリゴ糖は、小腸で消化酵素によって消化され単糖となり、吸収される“消化性”のオリゴ糖と消化されずに大腸まで届く“難消化性”のオリゴ糖の2種類に分かれます。さらに、その難消化性オリゴ糖は食物繊維素材として種類によって腸内細菌による発酵分解率が異なり、その結果、カロリー数が異なりますので、カロリー別に『0kcal, 1kcal, 2kcal』の3種類に分けることができます。難消化性オリゴ糖のカロリー数(エネルギー換算係数)が高いと、発酵分解率は高く、短鎖脂肪酸の産生量、つまり、善玉菌支配のためのエネルギー量が高くなります。したがって、『腸活』にはエネルギー換算係数が2kcalである難消化性オリゴ糖がお薦めです。

表1. 各種食物繊維とカロリー
表1. 各種食物繊維とカロリー

『腸活』効果に差はあるのですが、下記の難消化性オリゴ糖は何れもカロリーは2kcalで腸内細菌のバランスを整え、腸内環境を改善する働きがあります。

l フラクトオリゴ糖:アスパラ、ゴボウ、にんにくなどに含まれる難消化性オリゴ糖。甘味があるのでシロップとして利用されている。

l 乳果オリゴ糖:ショ糖と乳糖から酵素変換して生産されている。甘みが強いことからこの難消化性オリゴ糖を用いた『オリゴのおかげ』というシロップ製品が有名。

l ガラクトオリゴ糖:母乳に含まれる難消化性オリゴ糖。乳酸をアルカリ条件下で反応させて生産されている。

l αオリゴ糖:デンプンから酵素変換されて得られるブドウ糖6個が環状に結合した難消化性オリゴ糖。2019年4月にこのαオリゴ糖を用いた『血糖値の上昇を緩やかにする』という機能性表示食品が糖質・糖類カテゴリーで初めて受理された。

l キシロオリゴ糖:トウモロコシやタケノコから酵素変換によって得られる難消化性オリゴ糖。少量で『腸活』できるとされている。

l ラフィノース:ビートから抽出して生産されている。キャベツ、ブロッコリー、アスパラガスなどの植物に広く含まれている。整腸作用や免疫力向上に役立つとされ、粉ミルクに使用されている。

l イヌリン:果糖の重合体。大腸の腸内細菌で発酵分解される。キク科の根や地下茎、塊茎などに栄養源を貯蔵するための手段として利用されている。ダイエットや糖尿病予防効果があるとしてTVで紹介され話題となる。

l グアーガム分解物:インド・パキスタンなどで食用にされているマメ科植物のグアー豆の種子粉末であるグアーガム(主成分:ガラクトマンナン)を酵素で加水分解して生産されている。

フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖など一般的な難消化性オリゴ糖は砂糖の50~70%くらいの甘さがあり、甘味料として使用されています。しかしながら、難消化性αオリゴ糖は無味無臭ですので甘味料としては利用できません。逆に言えば、味を変えないので様々な飲料や食品への利用が可能となります。このシリーズでは、これらの難消化性オリゴ糖(食物繊維素材)の中でも、環状オリゴ糖であるαオリゴ糖がスーパー食物繊維として最も優れていることを示すエビデンスを紹介していきます。

工業生産されている3種の環状オリゴ糖(シクロデキストリン)の特性として、それぞれの消化・発酵分解による代謝速度については図1をご参照ください。

図1. α, β, γオリゴ糖の消化・発酵分解による代謝速度の比較
図1. α, β, γオリゴ糖の消化・発酵分解による代謝速度の比較

それぞれブドウ糖6個、7個、8個が環状に結合したオリゴ糖をα、β、γオリゴ糖(α、β、γ-シクロデキストリン)と呼び、同じバケツ状の形をしていますが、不思議に、それらの消化性・発酵分解性は異なっています。γオリゴ糖は消化性オリゴ糖であり、αオリゴ糖とβオリゴ糖は難消化性オリゴ糖です。そして、表1にありますようにαオリゴ糖とβオリゴ糖の何れもエネルギー換算係数が2kcalの難消化性オリゴ糖なのですが、図1に示されているように発酵分解による代謝速度は大きく異なっています。発酵分解性はαオリゴ糖の方がβオリゴ糖よりもはるかに高いことが分かっています。つまり、2kcalの難消化性オリゴ糖の発酵分解率は75%以上ですが、さらに『腸活』効果は細分化できるのです。実際、『腸活』に重要な短鎖脂肪酸産生量で比較すると、あの「お腹の健康のためのオリゴ糖」として有名な乳果オリゴ糖よりも難消化性αオリゴ糖の方が多いことが判っています。

また、3種の環状オリゴ糖は水溶性も大きく異なります。αオリゴ糖は水100mL中に14g、βオリゴ糖は1.8g、γオリゴ糖は23gです。まとめますと、γオリゴ糖は水溶性・消化性オリゴ糖、βオリゴ糖は難水溶性難消化性難発酵分解性オリゴ糖、そして、αオリゴ糖は水溶性・難消化性・発酵分解性オリゴ糖なのです。

表2. α, β, γオリゴ糖の特性(水溶性、消化性・発酵分解性)
表2. α, β, γオリゴ糖の特性(水溶性、消化性・発酵分解性)