CoQ10によるパーキンソン病への効果
これまで三大ヒトケミカルの一つであるCoQ10に関して様々な健康増進効果について取り上げてきました。
l CoQ10による加齢臭の低減(2017.6.)
l 脂質異常症治療薬スタチン投与の際のCoQ10同時処方の必要性(2017.1.)
l CoQ10が白血球に与える影響について(2016.12.)
l CoQ10のエネルギー産生による持久力向上(2015.1.)
l CoQ10の抗酸化作用による生活習慣病予防(2014.12.)
l CoQ10による骨密度上昇(2014.12.)
l CoQ10による腎機能改善(2014.12.)
l CoQ10による肝機能改善(2014.11.)
l CoQ10による筋肉保護作用(2014.10.と2013.9.)
l CoQ10とビタミンCによる美肌作用(2014.10.)
l CoQ10による血圧低下作用(2014.10.)
l CoQ10による脳機能改善(2014.9.)
l CoQ10によるドライマウスの改善(2014.3.)
l CoQ10の不妊治療効果(2013.2.)
私の中学校高校の友人で若くしてパーキンソン病となって他界した人、また、現在パーキンソン病を患っている友人もいます。パーキンソン病は円滑な運動を行うために重要な役割を担っている脳のドーパミン神経細胞に異常が生じて発生する病気で、歩き出しのタイミングに問題が生じたり、小刻みな歩行になるような症状が出てきます。日本人は10万人に100人(1000人に1人)の割合でパーキンソン病にかかっていますが、60歳以上では10万人に1000人、つまり、100人に1人が発症している身近な病気なのです。ドーパミン神経細胞は一般的に70歳のヒトの場合では20歳頃のピーク時の70%になり、神経伝達物質のドーパミン含有量は約50%に減少します。何らかの原因で、正常加齢を超える速さで神経細胞数が減少するために神経症状が現れてきます。そして、ドーパミン含有量が20%以下に減少すると特徴的な運動機能障害が現れ、パーキンソン病と診断されます。
パーキンソン病患者のCoQ10量は低いことからPDの進行抑制や発症予防に、CoQ10投与によるアプローチが期待されています。
神経科学専門誌に投稿された『パーキンソン病患者のCoQ10欠乏』というタイトルの論文があります。(Mischleyら、J Neurol Sci. 2012 Jul 15;318(1-2):72-5)
神経変性疾患であるパーキンソン病は、活性酸素による酸化ストレス障害の関与が示唆されており、抗酸化物質による疾患予防効果が注目され、抗酸化物質による臨床試験も試みられています。この研究報告では、22名のパーキンソン病患者群と88名の対照群の2群で2004年から2008年にかけて内在性CoQ10値を他の抗酸化物質(グルタチオン、セレン、ビタミンE、αリポ酸)とともに調べています。
その解析の結果、パーキンソン病患者群では対照群に比べてCoQ10が有意に低値(P = 0.003-0.009)であり、CoQ10の欠乏の割合がパーキンソン病患者群で対照群に比べ、有意に高値(P = 0.0012-0.006)であることが判明しました。その一方で、他の抗酸化物質については両群間に有意差は認められませんでした。(P > 0.05)パーキンソン病ではCoQ10欠乏が顕著であり、臨床研究においてCoQ10のパーキンソン病患者への投与による予防改善効果が示されています。
また、米国のParkinson Study Group(PSG)が中心となり、未治療のパーキンソン病初期患者80人を対象に、パーキンソン病症状の進行に対するCoQ10の効果を調べる臨床試験が行われています。
この臨床試験では(1)プラゼボ群、(2)CoQ10を300mg/日投与群、(3)600mg/日投与群、(4)1200mg/日投与群の4群に分け、投与開始前と投与開始から16ヶ月間、Unified Parkinson Disease Rating Scale(UPDRS)というスコアによる評価を実施しています。
その結果、CoQ10を摂取した患者の血中CoQ10濃度は用量依存的に増加が認められました。また、CoQ10を1200mg/日投与群において16ヶ月後にUPDRSスコアの増加が44%と有意に抑制され、患者の運動機能低下の速度を遅くできることが明かとなりました。