不妊症に対するコエンザイムQ10の効果|株式会社シクロケムバイオ
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不妊症に対するコエンザイムQ10の効果

不妊症とは避妊をしないで性生活を継続的にしているにもかかわらず、1年間妊娠が成立しない状態を指します。ただ、不妊症の原因は、男性・女性いずれか(あるいは両方)の原因を特定できる場合もありますが、はっきりした原因が特定できないケースもあります。そのような場合には夫婦二人が何れもCoQ10を一緒に摂取すれば妊娠の可能性は大きく高まります。夫婦してCoQ10を妊活に利用しましょう!

そこで男性が不妊原因の場合と女性が不妊原因の場合の双方に対するCoQ10の効果をみていきます。人が形成される元となる受精卵の前の精子も卵子も細胞ですので、ミトコンドリアを持っています。よって、健全な精子と卵子を維持するためには、ミトコンドリア活性を維持すること、高めることが必要であり、エネルギー産生作用と抗酸化作用を有するヒトケミカルのコエンザイムQ10とR-αリポ酸の摂取が有効となります。

では、まずは男性が不妊原因の場合です。健康な男性は1度に3億個もの精子を供給できるのですが、男性によっては精液にまったく精子が存在しない方(無精子症患者)、精子数が少なく1500万個以下/mLの方(乏精子症患者)、精子の動きの悪い運動率が40%未満の方(精子無力症患者)がいます。これらの患者に対してコエンザイムQ10を投与するとミトコンドリア活性が改善され精子数が増加し、運動率が上昇することがイランの研究グループの検討で明かとなっています。

Effect of Coenzyme Q10 supplementation on antioxidant enzymes activity and oxidative stress of seminal plasma: a double-blind randomised clinical trial, A. Nadjarzadeh et al., Andrologia, Article first published online: 7 JAN 2013

そもそも精子は図1に示しますように細胞の中でも唯一、ミトコンドリアを外に持っていまして、首に巻き付いた形で存在しています。当然、活性酸素にいつも晒されている危険な状態です。精子を長期保存するとミトコンドリア活性は減少しますので、老齢精子となり、運動率も下がることになります。これが不妊の原因です。そこで、精液中にエネルギー産生のための補酵素として働くコエンザイムQ10が十分存在すれば、抗酸化作用によって、活性酸素を除去し、精子は活性酸素の影響を受けずに済むわけです。

図1. 精子のミトコンドリア
図1. 精子のミトコンドリア

CoQ10の摂取によって原因不明のOAT症候群(精子濃度や精子運動率、正常精子形態率が基準値を下回る)の男性不妊患者の精液中の抗酸化能力の改善がイランで行なわれた試験で明らかとなりました。イランの研究グループは男性不妊患者47名を対象に二重盲検試験を実施しました。対象者をランダムにCoQ10摂取(23名)グループとプラセボ(偽薬)(24名)グループの2つのグループに分け、3ヶ月間服用してもらいました。その結果、CoQ10摂取グループは精漿中のCoQ10平均濃度が44.74ng/mlから68.17ng/mlへの上昇し、カタラーゼやSODといった抗酸化酵素の活性の向上が確認されました。一方、プラセボグループには変化が観られませんでした。さらに、精漿中の酸化ストレスマーカー(イソプラスタン)はCoQ10摂取グループで31.04pg/mlから22.86pg/mlに低下したもののプラセボグループは34.91pg/mlから42.54pg/mlに上昇したことが明らかとなりました。これらの結果から、CoQ10摂取は、男性不妊患者の精液中の抗酸化能力を高め、酸化ストレスを低減させて不妊治療に有効であると結論付けています。

図2. CoQ10摂取による精漿中CoQ10の増加と抗酸化作用
図2. CoQ10摂取による精漿中CoQ10の増加と抗酸化作用

男性不妊症とりわけ乏精子症に対するコエンザイムQ10内服療法の効果が検証されています。(日本不妊学会雑誌第29巻第4号P44-49, 1984)

対象は、昭和大学泌尿器科外来に1979年1月-1981年12月までの3年間に不妊治療の目的で来院した乏精子症患者39名です。平均年齢は35.6±3.3歳で、不妊期間61.7±29.2ヶ月です。CoQ10の投与量は1日60mgで投与期間は16週でした。表1に示しますように、CoQ10の投与によって、精子数、運動率、ともに顕著に上昇しました。特に、総運動精子数は2倍以上になることが判明しました。また、39名の中で7名が妊娠に成功(17.9%)し、そして、CoQ10投与が臨床的有効と判定された患者は18名(46.2%)でした。

表1. 乏精子症患者へのCoQ10投与による精子数と運動率の変化
表1. 乏精子症患者へのCoQ10投与による精子数と運動率の変化

次に、不妊原因が女性の場合です。女性の卵子は胎児のときに一生分が作られます。加齢に伴い卵子の質は低下し,受精率も低下するのですが、その理由は、酸化ストレスとミトコンドリアのエネルギー産生効率の低下によるものですので、抗酸化作用とエネルギー産生作用を有するコエンザイムQ10の摂取で卵子数、卵子の質の低下を抑制できることが判っています。

CoQ10摂取による卵巣機能向上についてのカナダの不妊治療クリニックの研究チームの報告です。

The use of mitochondrial nutrients to improve the outcome of infertility treatment in older patients, Yaakov Bentov, et al., Fertility and Sterility, 93(1), 272-275 (2010).

8ヶ月の高齢マウス40匹をコントロール群とCoQ10摂取群に分けて、18週間飼育しました。摂取期間終了後、卵巣刺激を行なったところ、CoQ10摂取群では、活性酸素濃度が低下し、ミトコンドリア活性度が向上し、卵巣刺激によって、正常な卵子数が顕著に多くなりました(コントロール群:摂取群=11.7:19.2)。このことは、高齢の不妊女性へのCoQ10のサプリメント摂取はミトコンドリア活性を高め、卵巣機能を向上させ、妊娠しやすくなる可能性のあると結論付けています。

図3. CoQ10摂取による正常な卵子数の増加
図3. CoQ10摂取による正常な卵子数の増加

このようにCoQ10摂取は不妊夫婦ともに不妊解消のために有効であることが示されています。