ミネラルの肌への効果(1)カルシウム|株式会社シクロケムバイオ
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2019.8.19 掲載

ミネラルの肌への効果(1)カルシウム

カルシウムは骨を丈夫にするミネラルとして知られていますが、肌の健康を維持するためにも大変重要なミネラルであることはあまり知られていないようです。ヒトが骨や肌の健康のために1日に必要なカルシウムの量は650mgなのですが、日本人の平均的な食生活では平均200~250mgの不足が生じています。

なぜ、カルシウムが肌の健康に必要なのでしょうか?

肌は表皮、真皮、皮下組織から成っていて、表皮は、さらに、基底層、有棘層、顆粒層、角質層の層から成っています。基底層で生まれた表皮細胞は分裂、増殖を繰り返し、形を変えながら上に押し上げられ、核を失って角化し、最終的には垢となって剥がれ落ちることになります。この表皮細胞の分裂、増殖、角化、剥離の繰り返しは肌のターンオーバーと言います。肌のターンオーバーがスムーズで28日の周期あれば健康的な美肌を保つことができるのです。しかし、この28日は20代までであり、30代以降は新陳代謝の速度が低下して周期も長くなっていきます。そこで、美肌を目的としてターンオーバーをスムーズに進めるためには表皮中のビタミンDとカルシウムがその鍵を握っているのです。太陽光を浴びる、あるいは、ビタミンD含有食品を摂ることで表皮中にビタミンDが取り込まれるとビタミンDはその受容体と結合します。その結果、表皮細胞内でカルシウムイオン濃度は上昇し、表皮細胞の分裂・増殖・角化・剥離を促すのです。(Menon 1994, Mauro 1998)

図1. ビタミンDとカルシウムによる肌の健康維持のメカニズム
図1. ビタミンDとカルシウムによる肌の健康維持のメカニズム

また、カルシウムには表皮細胞にある保湿成分を活性化させる働きも知られていて、カルシウム不足は肌の水分量を低下させてシワや乾燥肌の原因となります。

さらに、カルシウムには脳神経細胞の乱れを抑制することで興奮を鎮め、睡眠に誘導する作用もあります。表皮細胞は睡眠中に成長ホルモンの分泌で細胞分裂・増殖が起こります。成長ホルモンは寝入り直後の深い睡眠時に分泌されています。つまり、寝ている間に、昼間に傷ついた肌は修復されるので美肌のためには深い睡眠が大変重要なのですが、カルシウム不足は不眠症を引き起こし、肌に悪影響を及ぼすことになるのです。

図2. 睡眠と成長ホルモンの関係
図2. 睡眠と成長ホルモンの関係

ビタミンDとカルシウムの関係は単に両者が協力して表皮のターンオーバーをスムーズにするだけではありません。そもそもカルシウムは吸収されにくいのですが、ビタミンDを一緒に摂取すると吸収率は高まるのです。カルシウムを多く含む食品はヨーグルトやチーズなどの乳製品や納豆や豆腐など大豆食品であり、ビタミンDを多く含む食品にはイワシやサバなどの魚類、いくら、きくらげなどがあります。さらに、αオリゴ糖のような水溶性食物繊維には腸内細菌によって酪酸などの短鎖脂肪酸に変換され、腸内を酸性にしてカルシウムの吸収を助ける働きがあります。そこで、肌のターンオーバーによる美肌作りには、カルシウム含有食品、ビタミンD含有食品、そして、αオリゴ糖を組み合わせて摂ることが最高の食べ方なのです。

図3. 短鎖脂肪酸産生におけるαオリゴ糖と乳果オリゴ糖の比較
図3. 短鎖脂肪酸産生におけるαオリゴ糖と乳果オリゴ糖の比較