スーパービタミンEによるアレルギー症状の低減効果について
今回は、トコトリエノール(スーパービタミンE、以下、T3)によるアレルギー性皮膚炎に対する抑制効果について検討した結果を紹介します。先ずは、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息などのI型(即時型)アレルギーが起こるメカニズムについて簡単に説明します。
まず、アレルギーの原因となるアレルゲン(抗原)は、口(消化器)や皮膚の毛穴、鼻(呼吸器)などから体内に侵入します。すると、その侵入を伝えられた細胞中のBリンパ球は抗体を作ります。その抗体はマスト細胞にくっつき、その抗体にアレルゲンが結合した際に、そのマスト細胞からヒスタミンが放出され、アレルギー症状を引き起こすのです・・・・ん?マスト細胞とは何?良く分からん?ですか?そこのところ、さらに説明を加えます。
マスト細胞は、血管が分布する組織であれば殆ど体内のどこの組織でも見出すことができる細胞です。ジンマシンは、局所におけるマスト細胞の活性化が原因ですが、私達の体の様々な部位で発症することからもマスト細胞が全身に分布していることは明らかです。1877年にPaul Ehrlich博士によって発見されましたが、長年の間、マスト細胞の機能は不明でした。しかし、近年になって、この細胞がI型アレルギーにおいてヒスタミンを遊離する細胞であることが明らかにされました。ヒスタミンは血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進などの薬理作用を持つ有用物質ですが、一方で、過剰に分泌されるとアレルギー疾患の原因になります。そこで、このマスト細胞はアレルギー反応を起す原因の細胞として現在注目されています。
T3が、アレルギー性皮膚炎の抑制効果を持っているかどうかについて、アトピー性皮膚炎モデルマウス(NC/Nga mice)を用いて、そのヒスタミンの増減で評価されています。
(参考文献:Tsuduki, et al., J. Oleo Sci., 62(10) 825-834 (2013))
1週間、T3をマウスに経口摂取(1mg/日)させた後、塩化ピクリルでアトピー性皮膚炎(AD)を発症させたところ、(図1)に示すように、T3を摂取していない群(AD)に比べて、T3摂取群(AD+T3)の血清ヒスタミンレベルは有意に低減していました。尚、コントロールはADを発症させていない群です。また、この検討では、抑制効果の指標として、擦過(掻いた)回数やIgE(アレルギー反応に関与する抗体)なども評価していますが、同様の傾向がみられています。
次に、細胞を使ったアレルギー性皮膚炎の抑制効果の検証です。使用したラット好塩基球性白血病細胞(RBL-2H3)は、I型アレルギーに対する抗アレルギー作用を持つ物質のスクリーニングとしての探索研究などに広く用いられているものです。RBL-2H3細胞に各種T3を処理したところ、(図2)に示すように、細胞への取り込み量はδ-トコトリエノール(真のスーパービタミンE、以下、δT3)が最も大きく、(図3)に示すように、T3を作用させた細胞からのヒスタミンの放出量もδT3が最も効果的に抑制できていることが分かりました。
以上の結果から、in vivo(マウスの実験)でT3摂取によるアレルギー性皮膚炎の低減が確認され、in vitro(細胞の実験)でT3 の中でδT3が他のT3に比べ細胞に最も入りやすく、皮膚炎の低減効果も最も高いことが判明しています。