αリポ酸サプリメントに含有するS体の危険性が明らかに
日本で、αリポ酸のサプリメント化が可能となり、その製品が流通するようになったのは2004年のことですが、サプリメント大国のアメリカでは、それ以前から人気のあるサプリメントとして広く利用されてきました。その理由は“アンチエイジング”、“スポーツパフォーマンスの維持”、そして、“メタボ対策”です。αリポ酸は、抗酸化物質として活性酸素の害から私たちの体を守り、そして、糖代謝促進物質としてエネルギー産生を高め、糖尿病の合併症や老化の原因となる糖化を防ぐ抗糖化作用を有する健康増進効果がありますので、近年、注目を集めるようになってきました。
しかしながら、実際に広く使用されているαリポ酸は、本来、私たち自身の体内で作られているR体ではなく、天然に存在しないS体を50%含んでいるラセミ体です。ラセミ体よりもR体単独の方が、より効果が大きいという幾つもの研究報告があるのですが、ラセミ体の方が安定で製造コストが安いためにラセミ体が使用されています。
実は、αリポ酸の研究論文は“R体単独の方が健康増進効果”が高いという報告だけには留まっていないのです。意外に知られていませんが、非天然のS体を50%含むラセミ体の毒性に関する研究報告の論文も多数あるのです。
人に対する、ラセミ体αリポ酸サプリメントでは、特定の遺伝子素因を持った人がインスリン自己免疫症候群を引き起こし、低血糖状態になり、冷や汗や手足の震えが起こる問題が指摘されている程度ですが、ペット用のラセミ体αリポ酸サプリメント摂取による犬猫の死亡例は多く確認されています。動物実験に関する学術論文では、ビタミンB1欠損のラットや糖尿病モデルマウスを用いた実験で、非天然体であるS体を摂取すると死亡率が急激に増加することが分かっています。一方で、天然のR体摂取の場合は反対に糖尿病モデルマウスの死亡率を有意に減少させ、生存率を飛躍的に高めることが報告されています。
最近、私たちの研究で、S体のαリポ酸は胃液、腸液、血液などの生体内液中に存在するアルブミンやγ-グロブリンなどのタンパク質が存在すると凝集体を形成するという(R体では起こらない)現象が確認されました。
これまでの報告の中に、αリポ酸をマウスへ混餌摂取させた試験の血液生化学検査値において、尿酸やカリウムが有意に上昇したという報告があります。そして、その考察として“何らかの要因で腎臓に沈着あるいは蓄積し、糸球体の濾過機能に異常がみられる”といったαリポ酸の腎機能障害の可能性が指摘されております。このような報告に照らし合わせ、現在、私たちの研究グループでは、この腎機能障害は血中におけるS体とタンパク質の凝集体が原因であろう、と仮説を立てて、in vivo と in vitro の双方で、さらに詳しい研究を行なっております。
天然には存在しないS体を50%含む、αリポ酸サプリメントを製造販売している健康食品会社の皆様、αリポ酸サプリメントを愛飲している消費者の皆様、特に、メタボリックシンドローム、糖尿病、動脈硬化に不安を持っている方、腎機能に問題を抱えている方、そのサプリメントがラセミ体であれば、直ちに製造販売、愛飲を控えて下さい。そして、安全で健康増進効果のあるR体のサプリメントに切り替えて頂きたいと思います。天然に存在しない機能性物質を摂取することで、過去に重篤な障害を起こしていることは経験済みです。より健康な生活のためにサプリメントは利用されなければないと考えます。