ニュージーランド産プロポリスによる神経線維腫症の改善効果とは
ニュージーランド(NZ)産プロポリスにはコーヒー酸フェネチルエステル(CAPE)という成分が多く含まれているのですが、このCAPEに神経線維腫症(NF)に対して改善効果のあることが分かってきました。
その研究報告を紹介する前に、まず、NFとはどのような病気なのか説明しておきます。NFにはNF1型(レックリングハウゼン病)とNF2型の2つのタイプがあります。NF1型は、NF1という抗がん遺伝子の機能不全または欠損、NF2型は、NF2という抗がん遺伝子の変異または欠損によって発症します。どちらのタイプも、良性もしくは悪性(約10%)の腫瘍を脳の中や脊髄などに発生させて、さまざまな器官に障害が現れます。
日本での患者数は約3万人から4万人いて、世界的には200万人以上と言われていて、その内、約50%は遺伝により発症した人たちで、NFは遺伝性の希少難病です。
昔話の『こぶとりじいさん』は医学的にはNF患者だとの説もあり、生まれつきの皮膚の症状、母斑症の代表的な疾患で、このこぶとりじいさんの皮膚から突出したこぶやカフェオレ斑など皮膚病変や種々の内臓の異常を伴います。
2018年12月11日には『ザ!世界仰天ニュース』でNFの特集が組まれましたので、番組を見られた方もおられるのではないでしょうか?重さ70キロにもなる超巨大な腫瘍を患ったルチカ・ブンヘズさん(47)が紹介されていました。番組を見られていない方も『神経線維腫症』で検索し、画像を見ていただければどのような症状かお分かりいただけると思います。
腫瘍は良性なので手術で切除してもふたたびできてしまうのです。また、NFは転移性が高いので手術による局所的治療では不十分な面があります。さらに加えて、治療中に健康な神経を傷つけてしまい、後遺症が残るケースも少なくありません。そのような事情から、化学療法の必要性が高まり、治療薬の研究開発が進められており、その成果の1つがPAK遮断剤のFK228でした。FK228は抗がん剤として開発されたのですが、2005年にNF1型にも有効であることが動物実験で明らかとなりました。しかしながら、希少難病に対して臨床開発費用は膨大ですので、その後の開発はNF患者の期待通りには進められていません。そのような状況下でNF患者さんやそのご家族の方々から一刻も早く治療薬を開発してほしいという切実な声が多く上がっていました。そこで、機能性食品の中からPAK遮断効果を示す物質を探す研究が行われ、たどり着いたのがCAPEを含有するニュージーランド産プロポリスだったのです。
PAK遮断剤とはPAKと呼ばれる特殊なキナーゼ(酵素)の働きを遮断することで、腫瘍の成長を抑え込む薬剤のことです。がん全体の30%は発がん遺伝子RASの変異で起こるのですが、RASにより腫瘍を誘導させるには、キナーゼのPAKが必須なのです。ヒトのがんの70%はPAKに依存していて、残りの30%が他のキナーゼに依存しています。そして、PAKを遮断しても、正常細胞に影響なく(副作用なく)がんの増殖を抑制できるのです。
RASとPAKの間にはさまざまなタンパクが存在していて、これらのタンパクのシグナルの“ドミノ倒し”でPAKは活性化することが知られています。つまり、RASの腫瘍誘導にはPAKは必要であり、NFを含むがんの治療にはPAK遮断剤が有効なのです。そして、ニュージーランド産プロポリスに含まれるCAPEにそのPAKを遮断できる作用のあることが分かってきたのです。
CAPE含有量の高いニュージーランド産プロポリスを用いてマウスによる検討が行われています。マウスの脇腹の皮下に、MPNST(悪性末梢神経鞘腫瘍)と呼ばれるNF1腫瘍を移植し、腫瘍のサイズが直径約5mmに達した時に、ニュージーランド産プロポリス群(N = 5)はNZ産プロポリス(100mg/kg)を1週間に2回、腹腔内に投与し、コントロール群(N = 5)(ビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水中、11%のプロピレングリコール及び26%のDMSO))と比較した結果を(図2)に示しています。
このMPNSTは血管新生が進行しにくいため、最初の10週間は休眠状態でしたが、その後、コントロール群の腫瘍は一気に増殖しています。一方、NZ産プロポリス群の腫瘍の増殖は抑えられています。MPNST細胞の細胞分裂と転移、さらに血管新生がCAPEによって阻害されたと考えられます。
また、NF2腫瘍(神経鞘腫、Schwannoma)を移植してNZ産プロポリスを同様に投与してコントロール群と比較した結果を(図3)に示しています。
コントロール群の腫瘍が増殖する中、NZ産プロポリス群では、30日後にほとんどの腫瘍が退化しています。この退化は、腫瘍増殖の初期段階(腫瘍の平均体積は約150mm3)に投与を開始したときのみに生じています。腫瘍の体積が400mm3に達した後で投与を開始した場合には、残念ながら、退化はほとんど観察されませんでした。しかし、3倍の投与量(300mg/kg)であれば、腫瘍の体積が600mm3を越えたときに投与を開始しても、増殖は抑制できることが判明しました。
尚、この腫瘍の増殖抑制効果はCAPEを高含有するプロポリスの投与によってみられているのですが、シドニー大学和漢薬研究所のムーアらのグループが、さまざまな産地のプロポリス中のCAPE含量を分析したところ、ニュージーランド産プロポリスが最高の含量を示したことを発表しています。
しかし、この発表に対して、静岡県立大学の熊澤教授は、ニュージーランド産プロポリスのCAPE含量は、実際には中国の華北/湖北産プロポリスとほぼ同程度で、それほど飛び抜けて高いわけではなく、含量の高いピノバンクシン酢酸エステルとピークが重なって、見かけ上多く見えた可能性があるとして、否定的な見解を示しています。
確かに、ニュージーランド国内でも地域や気候変動によってプロポリスに含まれるCAPE含量に変動がみられます。
そこで、当社はニュージーランド現地のプロポリスメーカーと協力し、プロポリス10g中のCAPE含量に基づいて、NZ産プロポリスのCAPE含量を規格化しました。例えば、プロポリス10g当たり30mg以上のCAPEを含有する場合は、『NZCAPE30+』と表記しています。この規格を導入した製品が国内でも販売されておりますのでご参考ください。