R-αリポ酸γ-CD包接体による非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の予防・改善効果|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
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2013.11.25 掲載

R-αリポ酸γ-CD包接体による非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の予防・改善効果

今回は、R-αリポ酸のγ-CD包接体(RALA-CD)による非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対する改善効果が、ドイツ・キール大学、及び、NASHモデルマウスを開発しましたステリック再生医科学研究所と株式会社シクロケムとの共同研究によって立証された内容を紹介させて頂きます。

先ず、NASHについての説明から入ります。NASHは文字通り、発生原因にアルコールが含まれていない、つまり、お酒好きではない人でも患ってしまう、原因がはっきりと分かっていない肝炎です。NASH予備軍である非アルコール性脂肪肝疾患(Nonalcoholic Fatty Liver Disease、以下、NAFLD)を含めて自覚症状が殆どないために、検査で発覚することの多い病気です。NASHから生命に危機を及ぼす肝硬変、肝癌へと進行することが知られています。日本国内では現在、10人に1人の1000万人以上がNAFLD、100万人がNASH患者と推定されております。

NASHの発症機構は、いまだに解明されていませんが、主なNASHを引き起こす原因に、肥満、糖尿病、高脂血症などのインスリン抵抗性によって肝臓に脂肪が蓄積することや脂質の過酸化、サイトカイン、鉄などの酸化ストレスがあるようです。そこで、我々は、インスリン抵抗性を抑え、さらに、酸化ストレスの抑制作用もあるRALA-CDのNAFLD、NASHへの効果を検証しました。

先ず、キール大学との共同研究において、RALA-CDを摂取させたC57BL/6雌マウスの肝脂肪組織における12/15-リポキシゲナーゼ遺伝子(Alox15)の発現をgene chip解析とPCR検出で確認したところ、コントロールに比べて有意に発現抑制されていました。

図1. R-αリポ酸のγ-CD包接体(RALA-CD)を摂取させたC57BL/6雌マウスの肝細胞組織における12/15-リポキシゲナーゼ遺伝子(Alox15)の発現抑制
図1. R-αリポ酸のγ-CD包接体(RALA-CD)を摂取させたC57BL/6雌マウスの
肝細胞組織における12/15-リポキシゲナーゼ遺伝子(Alox15)の発現抑制

遺伝子なんて難しそうで訳が分からん、と思った人に・・・・この遺伝子名を覚える必要はありません。この遺伝子を減らすことができれば、脂質異常症マウスのNAFLDの発症を防止できることが知られているのです。RALA-CDは、この遺伝子の発現を抑えられるので、RALA-CDの摂取でNAFLDが予防できることが分かったとだけでも理解して下さい。

次に、ステリック再生医科学研究所によって、STAM®マウス(NASHモデルマウス)を用いて、R及びS-αリポ酸を1ヶ月間投与し、NASHに対する効果をNAFLDスコアと肝臓の生検写真によって確認しました。

図2. R-及びS-αリポ酸を1ヶ月投与されたNASHモデルマウスのNAFLDスコアと肝臓の生検写真(左:R-αリポ酸、右:S-αリポ酸)
図2. R-及びS-αリポ酸を1ヶ月投与されたNASHモデルマウスの
NAFLDスコアと肝臓の生検写真(左:R-αリポ酸、右:S-αリポ酸)

尚、NAFLDスコアとは、脂肪肝、肝小葉の炎症、肝細胞のバルーニング(風船状腫大)をスコア化したものです。R-αリポ酸群ではVehicle群に対して有意にNAFLDスコアが低下することが判明しました。つまり、S体ではなくR体のαリポ酸がNASH、NAFLDの症状の改善や予防に有効であることが証明されました