豆味噌の抗糖化と抗酸化による美肌効果
大豆に含まれている機能性成分のイソフラボンはエストロゲン様活性、抗酸化作用、抗がん作用、骨粗鬆症予防作用などが知られており、機能性食品分野において注目されている成分の1つです。これらの作用の中で抗酸化作用は大豆中のイソフラボン配糖体から糖が外れてアグリコンとなって抗酸化機能を発揮します。しかしながら、味噌などの大豆発酵食品の方が未発酵の食品に比べて抗酸化能が高いことが確かめられており、発酵食品中の成分分析によって、イソフラボンのアグリコンから、さらに、抗酸化活性の高い水酸化イソフラボンへ変換されていることが今から20年以上前に既に見出され報告されているのです。
そのような中、最近、大豆エキスを麹菌で発酵させた水酸化イソフラボン高含有素材(商品名:ユニファイン)が株式会社東洋発酵によって開発され、水酸化イソフラボンの機能性としては抗酸化作用とともに抗糖化作用に関心を向けられています。
身体の酸化が『カラダのサビ』であれば、糖化は『カラダのコゲ』と表現されており、ヒトが老化するのは酸化と糖化によるものなのです。つまり、老化を防ぐためには抗酸化作用のある食品とともに抗糖化作用のある食品を日頃から摂取することが大変重要であり、そのような理由から、食品としては、どちらの機能も有する水酸化イソフラボンを含有する大豆味噌がにわかに注目を集めているのです。
糖化は、血液や体内に増えたブドウ糖がエネルギーに変換されず、身体を構成している血管、骨、各種臓器などのタンパク質と結合することで、さまざまな病気や老化の原因となる反応です。その中で、見た目に現れるのが、肌老化です。シミやシワが増え実際の年齢よりも見た目年齢が高い人は糖化が大きな要因です。そして、見た目が実年齢よりも老けていると、血管をはじめ、全身の糖化も進んでおり、見た目は糖化の指標にもなるのです。
肌の真皮層にはコラーゲンタンパクが張り巡らされていて、肌の弾力性を保っているのですが、コラーゲンタンパクが糖化されるとシワやたるみが増え、弾力性が低下するので見た目に老けた感じになってきます。抗糖化によって正常なコラーゲンのらせん構造を維持する必要があります。
糖尿病患者は体内の過剰なブドウ糖によって糖化しやすい状態にあります。そこで、実際に、II型糖尿病患者76名と非糖尿病の健常者77名の年齢と皮膚弾力指数の関係を調べた研究報告があります。(M. Kubo et al., J. Clin Biochem Nutr 43 (Suppl 1); 66-69 (2008))その報告によると、50歳以降、糖尿病患者は糖化によって肌弾力性が顕著に低下するのは明らかなようです。
水酸化イソフラボンを高濃度で含有する発酵イソフラボンと未発酵のイソフラボンによるブドウ糖とヒト血清アルブミン(HSA)の糖化で発生する終末糖化産物(AGEs)の生成抑制作用の比較評価が行われています。その結果、水酸化イソフラボンによる高いAGEs生成抑制作用が示されています。そして、その作用はポジティブコントロールの糖化反応阻害剤として知られるアミノグアニジンよりも高いことが示されています。(東洋発酵資料より改変)
大豆の発酵食品の抗酸化に関しては、椙山女学園大学の江崎らが2002年に既に報告しています。(醸協97(1)、39-45(2002))
大豆味噌は古くから味噌漬けいわしや味噌煮の魚において脂質の酸化防止に利用されていました。そこで、江崎らは、味噌の抗酸化活性を原料の蒸煮大豆と比較しています。これらの乾燥粉末を40℃で暗所に貯蔵した後、脂質過酸化物量を測定した結果、原料大豆と比較して大豆味噌の方が強い抗酸化力を示すことが明かとなっています。
そして、後に、その抗酸化力が発酵という工程でイソフラボンから変換された水酸化イソフラボンであることも判明しています。
このように、発酵によって作られた水酸化イソフラボンを含有する大豆味噌は抗酸化作用と抗糖化作用があるので美肌効果のみならず、メタボ対策、フレイル対策、認知症対策といったアンチエイジング、健康増進効果も期待できます。
尚、スーパー食物繊維である難消化性αオリゴ糖を摂取するとブドウ糖の吸収が抑えられ血糖値の上昇が抑制されるという抗糖化作用が知られており、ヒトケミカルのR-αリポ酸はミトコンドリアにおいてブドウ糖代謝促進による抗糖化作用が知られています。これらの物質は水酸化イソフラボンの抗糖化作用と作用機序が異なっていますので、肌の老化防止のためには、これら3成分を組み合わせて摂取することがお薦めなのです。