健康づくりとスポーツパフォーマンスを向上させる深呼吸とヒトケミカル
ハーバード大学医学部客員教授の根来秀行先生があるテレビ番組でカラダの不調の原因は呼吸に問題があり、呼吸の質を高めれば不調の改善だけではなく、免疫力のアップにもつながると解説していました。呼吸の質は『呼吸の深さ』であり、深い呼吸、特に『4・4・8呼吸法』を質のいい呼吸と推奨していました。深呼吸はカラダの不調の改善や免疫力向上、そして、スポーツパフォーマンス向上に有効な手段であると考えられます。
① 腹に手を置き4秒かけて鼻から息を吸う
② 4秒間息を止める
③ 8秒かけて鼻から細く長く息を吐く
吸い込んだ空気は、肺から肺胞の毛細血管に取り込まれていきます。そして、赤血球によって酸素は脳や心臓などの臓器や筋肉の全身の60兆個の細胞に運ばれていき、細胞内のミトコンドリアにおいて、糖や脂質を酸素による酸化で代謝し、酸素は消費されて二酸化炭素を発生させること(細胞呼吸といいます。)でエネルギーを作っています。
この『今、注目していること』ではこれまでに何度となくミトコンドリアにおける糖や脂質の代謝によるエネルギー産生について三大ヒトケミカル(コエンザイムQ10、R-αリポ酸、L-カルニチン)の重要性を解説してきました。しかしながら、糖や脂質などのエネルギー源と三大ヒトケミカルだけではエネルギーを作り出すことは出来ず、ミトコンドリアへの酸素の取り込みも大変重要なのです。
浅い呼吸で細胞に十分な酸素を運ぶことができないとエネルギー不足で、脳・臓器・筋肉などのさまざまなカラダの機能が低下し、その結果、だるさ、肩こり、頭痛などの諸症状に繋がっていきます。また、病原性細菌やウイルスの除去の役目を担っているナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞も働き辛くなり、コロナやインフルエンザなど感染症にもかかりやすくなってしまうのです。パソコンを長時間して猫背気味になっている人、ストレスを感じやすい人、鼻でなく口で息をしている人などに質の悪い浅い呼吸の人が多いですので、そのような方々は日頃から心がけでどこかのタイミングで深呼吸をすることを習慣付けするのが好ましいと思われます。
一方、年齢とともに三大ヒトケミカル量は減少していきます。三大ヒトケミカルの一つであるコエンザイムQ10の場合、酸素を取り込むための呼吸に重要な肺においては80歳で体内生産量は約半分まで下がってしまうのです。また、多くのエネルギーを必要とする心臓では、20歳を境に急激に減り始め、40歳では約3割減、80歳では約6割減となっていくことが知られています。
そこで、三大ヒトケミカル摂取と日頃からの深呼吸の習慣付けの組合せは、病気にかからない身体作りとともにスポーツパフォーマンスを向上させる良い方法だと考えられます。