マヌカハニーと難消化性αオリゴ糖の組み合わせでコロナ感染予防と重症化防止対策を提案|株式会社シクロケムバイオ
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マヌカハニーと難消化性αオリゴ糖の組み合わせでコロナ感染予防と重症化防止対策を提案

コロナウイルス感染の終息の兆しは全く見せず、人工呼吸器や集中治療室などで治療を受けている重症者も増えており、医療崩壊の危機が迫っています。一方で、効果的なワクチンの開発は世界で少なくとも30以上もの企業と研究機関が精力的に進めていまして、このところ、米国やロシアでの開発のニュースをよく耳にします。しかし、安全性を考慮するとワクチン開発には優れた科学だけではなく時間と費用が掛かります。少しでも早く安全で効果的なワクチンが完成することを期待したいところです。

このような状況下で機能性食品に関する複数の研究報告の調査から、マヌカハニーと難消化性αオリゴ糖を組み合わせて摂取することが感染予防と重症化防止対策となる可能性が高いと思っています。その理由を以下に説明していきます。

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)はCOVID-19として知られる現在のコロナウイルス疾患の原因となっていますが、2020年11月にコロナウイルスに対する防御力を高めるために難消化性αオリゴ糖(αオリゴ糖)とオリーブの葉や果実から抽出される抗酸化物質であるヒドロキシチロソール(HTS)を活性成分とするサプリメントによる効果の検証がイタリアの研究グループによって報告されました。

A pilot study on the preventative potential of alpha-cyclodextrin and hydroxytyrosol against SARS-CoV-2 transmission(α-シクロデキストリンとヒドロキシチロソールのSARS-CoV-2感染予防効果のパイロット研究)Acta Biomed 2020; Vol. 91, Supplement 13: e2020022

このコロナウイルスは、ヒトの細胞膜上に存在している膜貫通性セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2)の助けを借りて、コロナウイルスが持っているスパイクタンパク質をアンジオテンシンI変換酵素2(ACE2)に結合させることで、気道上皮の細胞を攻撃し、細胞内に侵入することが知られています。そこで、このTMPRSS2とACE2の2つのタンパク質の働きを阻害するとコロナウイルスはヒトの細胞内に侵入できないことになります。

図1. コロナウイルスの侵入を防ぐためのTMPRSS2とACE2の活性阻害作用
図1. コロナウイルスの侵入を防ぐためのTMPRSS2とACE2の活性阻害作用

タンパク質のACE2とTMPRSS2は細胞膜の脂質ラフトに局在しているのですが、αオリゴ糖はこの脂質ラフトからスフィンゴ脂質を減少させ、細胞内に侵入するために必要なリン脂質も減少させる作用が知られています。αオリゴ糖が持つこれらの作用はACE2とTMPRSS2の働きを阻害してコロナウイルスの侵入を抑制できるものと考えられます。

また、この報告でHTSをコロナウイルス感染の防御のための活性成分として選択した理由はHTSが幅広い抗ウイルス活性を有していて、特に、インフルエンザウイルス、HIV、コロナウイルスのようなエンベロープを持つウイルスに対して感染性を低下させるためです。

HTSのインフルエンザウイルスに対する効果については下記参考文献を挙げています。

図

この文献では、各インフルエンザウイルスを室温で24h、HTS(1000μg/ml)で処理し、その処理したウイルスを10倍希釈で連続的に希釈した上で、MDCK細胞に接種してウイルス力価を評価しています。黒いバーは、HTSを処理していない対照ウイルスの力価を示していまして、HTSに抗インフルエンザウイルス作用のあることが確認されています。

図2. ヒドロキシチロソールの各インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用の評価
図2. ヒドロキシチロソールの各インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス作用の評価

また、COVID-19の重症化にはTNF-αなど炎症性サイトカインの急速な増加が原因となりますが、HTSはこのような炎症性サイトカインのレベルを低下させ、重症化を抑えることも知られています。

では、この報告の方法です。HTSとαオリゴ糖を配合した(表1)に示す内容のスプレーを作成しています。

表1. スプレー組成(密度1.1g/ml)

  化合物 含有率(%)
  52.57
活性化物 ヒドロキシチロソール 3.8
αオリゴ糖 0.2
共乳化剤 グリセリン 3.8
香料 レモンフレーバー 0.98
酸味料 クエン酸 0.3
防腐剤 安息香酸ナトリウム 0.1
ソルビン酸カリウム 0.1
粘度調整剤 キサンタンガム 0.05
甘味料 果糖 38.06
ステビオール配糖体 0.02
スクラロース 0.02

被験者は北キプロス出身のSARS-CoV-2感染リスクの高い健康なボランティア50名とSARS-CoV-2陽性者6名です。

登録された50名の被験者は感染が最も活発な時期に仕事柄コロナ感染リスクが高い人をセレクトしています。また、それ以前にウイルス感染していないことをELISA抗体検査により確認されています。試験期間は2020年8月16日から2020年10月3日です。50名に1日4回(1回の投与につき4噴霧 = 0.5mL)のスプレーを15日間使用して試験期間中にコロナ感染の無かったことで予防効果を確認しています。

陽性者6名のうち症状のある2名は、7日間の推奨された治療を行ってもSARS-CoV-2の陰性化は認められなかったため、スプレーを使用しています。このスプレーを使用した2名の患者は5日後にSARS-CoV-2検査で陰性となりました。一方、残りの陽性者4人は無症状のためスプレーを使用せず、10日後に陰性となり、陽性者のスプレーの効果を確認したとのことです。

まだコロナ感染予防のためのHTSとαオリゴ糖の組み合わせによる効果の十分な検証とは言えなく、可能性があることを示唆している段階に過ぎません。今後、健常者およびウイルス陽性者に対して、対象群の設置をし、サンプル数を増加させる予定だとのことです。

ここでは、HTSとαオリゴ糖の組み合わせによる効果を検討しております。HTSはヨーロッパ諸国や米国において食品として利用できますが、日本においてHTSは、未だに食品としての利用は認可されておりません。

そこで、HTSの代わりにエンベロープを持つインフルエンザウイルスに対して抗ウイルス作用を持ち、しかも、重症化を防ぐために炎症性サイトカインを減少させる抗炎症作用を持つマヌカハニーとαオリゴ糖の組み合わせによるコロナ感染予防と重症化防止対策をここに提案したいのです。

図3. 各種ハチミツによる50%インフルエンザウイルス(H1N1)の阻止濃度
図3. 各種ハチミツによる50%インフルエンザウイルス(H1N1)の阻止濃度
表2. マヌカハニーによる炎症性サイトカインの減少
表2. マヌカハニーによる炎症性サイトカインの減少