ホエイプロテインとソイプロテインの組み合わせによる筋肉の増強維持|株式会社シクロケムバイオ
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2022.3.22 掲載

ホエイプロテインとソイプロテインの組み合わせによる筋肉の増強維持

動物と植物のタンパク質中には何れにも分岐アミノ酸(BCAA)が豊富に含まれています。特に、BCAAの中でもロイシンの含量が多く、総アミノ酸の8%前後となっています。ロイシンはタンパク質の主要構成成分ですが、ただ単に構成成分であるだけではなく、mTOR(エムトール)(コラム参照)を活性化して、筋肉細胞を増やし(リポソーム生合成を促進)、筋肉タンパク質の合成を促進(mRNA翻訳を促進)し、タンパク質分解を抑制する(オートファジーを抑制する)筋肉増強と維持に重要な作用も持ち合わせていることが近年明らかとなってきています。

図1. ロイシンによる筋肉合成促進メカニズム
図1. ロイシンによる筋肉合成促進メカニズム

動植物タンパク質の中でもホエイプロテインはロイシンを総アミノ酸の12%も含有することから筋肉合成には最も効果的なプロテインと言えます。その一方、生体内には筋委縮(筋肉の減少)を抑制するオリゴペプチドの存在も明らかとなっており、大豆に含まれるソイプロテインにはこのオリゴペプチドに似たグリシニンというタンパク質が含まれていて、そのグリシニンには筋肉の分解を抑制する作用のあることが発見されています。(寝たきりや無重力による筋委縮のメカニズム解明とその栄養学的治療法の開発、二川、日本栄養・食糧学会誌、第70巻、第1号3-8(2017))

このように筋肉の増強維持に有効であるさまざまな動植物タンパク質がある中で、ホエイプロテインは筋肉合成に最も効果的なプロテインであり、ソイプロテインは筋肉分解を抑えるために有効なプロテインなのです。

そこで、ホエイプロテインとソイプロテインの相加効果を検証する研究が脚の座骨神経を切除した(筋委縮モデル)マウスを用いて行われています。この検討にはカゼイン、ソイプロテイン、ホエイプロテイン、そして、ソイプロテインとホエイプロテインのブレンドが投与されており、解剖した筋肉の萎縮率について、神経切除した脚としていない脚を比較して測定しています。(二川ら、坐骨神経切除による筋萎縮に対する大豆たん白質とホエイたん白質の相加効果、大豆たん白質研究(2017))

その結果、ソイプロテインとホエイプロテインを1:1摂取することで、坐骨神経切除したマウスにおける筋委縮率は最も抑えられていることが判明しています。ソイプロテインが筋肉分解を抑え、ホエイプロテインが筋肉合成を促進することから、併せて摂取することで、双方の働きが相まって、筋肉の減少が抑制されたと考えられます。

図2. 筋委縮に対するソイプロテインとホエイプロテインの相加効果
図2. 筋委縮に対するソイプロテインとホエイプロテインの相加効果

コラム

mTOR(エムトール)はマーマリアン・ターゲット・オブ・ラパマイシンの略です。線虫にラパマイシンという微生物が産生するマクロライド物質を投与したところ、線虫の成長が止まりました。この原因はラパマイシンによって生体内合成が抑制されたタンパク質であることが分かり、そのタンパク質のことをTORと呼ぶようになりました。つまり、ラパマイシンによって抑制されてしまうのがTORです。そして、哺乳類(マーマリアン)にもTORが存在しているので、哺乳類のTORのことをmTORと呼びます。