パーソナル化サプリメントのトッピング機能性成分(13)脳の健康のために
このシリーズではパーソナル化サプリメント(PS)における各個人の目的のためのトッピング機能性成分の科学的根拠を説明していきます。今回は脳の健康のためのトッピング成分を提案します。
トッピング機能性成分による脳機能の改善、といえば、高齢者の認知症の予防や改善が浮かぶと思いますが、高齢者だけではなく、子供や成人、中高年にも共通しています。つまり、脳機能に有効な成分を摂取することで脳は確実に活性化し、子供の場合は学習能力が向上し、大人の場合は物忘れ防止や自律神経の正常化によるメンタルの向上にも繋がり、精神状態を安定化させ、俗にいう「キレる」状態を防いでくれるのです。
先ずは、高齢者の認知症に関する情報です。認知症を患う老人は65歳以上で4~5%、80歳以上では10~20%に増加します。この認知症のタイプで多いのはアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の2つです。日本ではアルツハイマー型が60%で脳血管性が30%と言われています。
- アルツハイマー型認知症:『脳の病』
- 脳血管性認知症:『血管の病』
アルツハイマー型は、原因不明の進行性の疾患で脳細胞が全般的に萎縮し、障害は、日1日と進行する『脳の病』です。発症メカニズムはハッキリしないものの、アミロイドβ蛋白(Aβ)を主成分とする老人斑の脳内蓄積によるアミロイド仮説が最も多くの研究者に支持されています。
Aβを脳内に沈着させたアルツハイマー病態モデルマウスを用いた各種機能性成分のアルツハイマー型認知症の予防効果が検証されており、亜麻仁油に含まれるαリノレン酸やDHAなどのω3不飽和脂肪酸(ω3PUFA)、クルクミン、CoQ10などのヒトケミカルが有効であることが明らかとなっています。(図3)はクルクミンの検証結果です。
尚、パーキンソン病も『脳の病』ですが、こちらは運動の指令を中継する脳の一部(中脳にある黒質や大脳基底核)に問題があり、スムーズな運動や姿勢が保てなくなる病気です。神経細胞間の化学伝達物質のドーパミンの減少によるものです。パーキンソン病もアルツハイマー病も活性酸素による酸化ストレス障害の関与が示唆されており、抗酸化物質による疾患予防効果が注目され、抗酸化物質による臨床試験も試みられています。生体内の抗酸化物質の中でもパーキンソン病のCoQ10の欠乏の割合がパーキンソン病患者群で対照群に比べ、有意に高値(P=0.0012-0.006)であることが判明しており、CoQ10のパーキンソン病患者への投与による予防改善効果が示されています。
一方、脳血管性は、その名称の通りで、老化による動脈硬化などで脳の血管が詰まったり狭くなったりして、血液、酸素、エネルギー源の供給が十分でなく、部分的に神経細胞が死滅したり、活動が妨げられた結果に起こる『血管の病』です。よって、脳血管性認知症は栄養素の補給によって、脳機能の改善が期待できます。また、神経細胞は死滅しても、学習努力でシナプスは新生しますので、たとえ、80歳を越しても、原理的には、知識、判断力ともに若者をしのぐ能力をよみがえらせることが可能です。
この『血管の病』に有効なPSのトッピング成分にはTie2活性化による毛細血管再生作用のあるクルクミンとピペリン、血小板の凝集を抑制して血栓を予防する作用のある亜麻仁油に含まれるαリノレン酸やEPA・DHAなどのω3不飽和脂肪酸(ω3PUFA)、動脈硬化の原因となるLDLの酸化を防ぐδ-トコトリエノール(δT3)、ビタミンB群、そして、微量金属類(亜鉛、鉄)があります。
高齢者だけの認知機能障害とは言えない若者の病気でもあるうつ病や総合失調症などの自律神経障害には、神経細胞保護作用のあるヒトケミカルのコエンザイムQ10とR-αリポ酸、そして、δT3が有効であることが示されています。
(表1)に脳の疾患であるアルツハイマー病、パーキンソン病、脳血管性認知症、自律神経障害の予防(脳の健康)のために摂取して欲しいPSのトッピング成分を纏めています。
病名 | 主原因 | 予防・治療に有効な食事と栄養素 |
---|---|---|
アルツハイマー型 認知症 |
アミロイドβ 老人斑の蓄積 |
ω3PUFA、δトコトリエノール、CoQ10、クルクミン、 R-αリポ酸、L-カルニチン、ヒシエキス、発酵イソフラボン |
パーキンソン病 | 酸化ストレス ドーパミンの減少 |
δトコトリエノール、CoQ10、R-αリポ酸、アスタキサンチン |
自律神経障害 (うつ病、統合失調症) |
酸化ストレス | ω3PUFA、δトコトリエノール、CoQ10、ビタミンC、 R-αリポ酸、L-カルニチン |
脳血管性認知症 | 動脈硬化 | ω3PUFA、δトコトリエノール、ビタミンB群、CoQ10、 R-αリポ酸、亜鉛、鉄 |