コラーゲンペプチドと非変性II型コラーゲン|株式会社シクロケムバイオ
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2024.9.24 掲載

コラーゲンペプチドと非変性II型コラーゲン

私は2007年に『ひざ痛、腰痛がなくなる日』とのタイトルの本をだしています。本書の見出しは、サプリメントの見方が「変わる!!」、CoQ10なんて効かなかったと嘆くあなた。そのサプリ、ちゃんと吸収されましたか?でした。「効くサプリメント」の秘密を、科学的な目で解説しています。

『ひざ痛、腰痛がなくなる日』(長崎出版、2007年)
『ひざ痛、腰痛がなくなる日』(長崎出版、2007年)

そして、本書の内容に基づいて「効くサプリメント」として、現在も株式会社コサナから「ナノサポートシクロカプセル化スムースUP」というサプリメントが販売されています。

ナノサポートシクロカプセル化スムースUP

ひざの痛みは関節軟骨のすり減りが原因です。関節のコラーゲンは軟骨に多く含まれていて、コラーゲン線維が作る網目状の骨組みの中にプロテオグリカンという糖タンパクが加わっています。したがって、軟骨のすり減りを防ぎ、ひざの痛みを減少・消失させるためにはコラーゲンとプロテオグリカンの再生が必要です。その再生を目的として開発された「スムースUP」は医師の診断による効能評価試験でしっかりと評価されたサプリメントです。「スムースUP」にはコラーゲンとなる原料のコラーゲンペプチド(810mg/日)とプロテオグリカンとなる原料のグルコサミン(353mg/日)が配合されています。さらに、コラーゲンとプロテオグリカンを再生する線維芽細胞で働くCoQ10が必要なのですが、CoQ10は脂溶性のために吸収性に乏しいという問題点がありますので、このサプリメントには吸収性を劇的に高めたCoQ10包接体(72mg/日、CoQ10として14mg/日)を使用しています。そして、ひざ関節痛のある被験者16名に『スムースUP』を12週間摂取してもらい、ひざ関節痛のアンケート調査を行うとともに医師の所見・評価を得ました。

CoQ10-γ-オリゴ糖包接体と
コラーゲンペプチド併用による
膝関節痛軽減効果の検証

成分名 摂取量/1日
(mg)
フィッシュコラーゲンペプチド 810
グルコサミン 352.8
CoQ10-γ-CD包接体
(CoQ10)
72
(14.4)

市販サプリメント
「NANO Support シクロカプセル化スムースUP」
(株式会社コサナ)

被験者16名

項目 全体 男性 女性
人数(人) 16 5 11
平均年齢(歳) 53.6 58.6 51.4

評価方法
サプリメントを12週間摂取してもらい膝関節痛のアンケート調査を行うとともに医師の所見・評価を得た。

その結果、摂取8週間後には有意にひざの痛みは改善することが判明しました。ここでいう有意差pが0.001より低いとの意味は、99%以上の確率で差が生じたことを意味していますので、『スムースUP』を摂取すればほとんどの方のひざの痛みが解消するという結果でした。

膝関節痛のアンケート調査VAS(Visual Analog Scale)

有意に値は低下し膝関節痛の改善を確認
(※Dunnettの検定による統計解析)

膝の痛みの程度(VAS)の推移

コラーゲンについてもう少し知識を深めましょう。

コラーゲンは、皮膚、関節、骨などの体内のさまざまな部位に存在しており、各部位での役割によって存在するコラーゲンの種類は異なります。その種類は20種類以上にもなるのですが、特に摂取によって人の健康に有用となるコラーゲンはI型とII型の2種類です。

I型コラーゲンは軟骨以外の部位の主成分で、皮膚のコラーゲンの90%を占めています。II型コラーゲンは、関節の軟骨の主成分で、水分やプロテオグリカンを保持して潤滑性を有し、関節をしっかりと保持する役割を担っています。

市販されているコラーゲンペプチドはコラーゲンを加水分解し、分子量は3,000から5,000ダルトン位に設定されています。分子量が5,000ダルトン以上の場合には、摂取した際に消化管内のタンパク分解酵素プロテアーゼによるトリペプチド、ジペプチド、アミノ酸と言った吸収され易い物質までの変換が困難で、生体吸収され難くなり、逆に、3,000ダルトン未満の場合には臭いの問題が生じるからです。

コラーゲンがプロテアーゼでトリペプチド、ジペプチド、アミノ酸になるとI型やII型といったコラーゲンの種類は関係なくなり、体内の真皮、骨、靭帯、腱などコラーゲンを必要とする部位にまで到達して、それらの部位でコラーゲンの再構築が行われ、美肌、骨粗鬆症予防、ひざ関節痛予防などのさまざまな効果を発揮することが知られています。

尚、シクロケムバイオではキウイフルーツに含まれるアクチニジンというプロテアーゼをα-オリゴ糖で安定化した粉末(キウイフルーツαオリゴ糖パウダー、KAP)を市販のコラーゲンペプチドと一緒に摂取すると、コラーゲンペプチドを効率良くトリペプチド、ジペプチド、アミノ酸に加水分解して吸収させることを提案しています。

一方で、非変性II型コラーゲンは、コラーゲンの3重らせん構造を維持したままの状態ですので生体吸収はされません。しかしながら、軟骨の修復に有効であることが知られています。なぜでしょうか?

実は、非変性II型コラーゲンは構造を維持したまま腸管まで届きます。そして、腸管において免疫系の反応を誘導することで関節軟骨を修復することが明らかとなっているのです。ここでは、私の友人である王堂氏が2022年に『フードスタイル21』の投稿した『非変性II型コラーゲンによる関節ケア』という演題の論文より、非変性II型コラーゲンの関節の炎症を抑えるしくみについて、引用させていただきます。

非変性II型コラーゲンの関節炎症抑制のしくみ

引用:フードスタイル21 2022年1月号の特集『非変性II型コラーゲンによる関節ケア』

非変性II型コラーゲンの関節炎症抑制のしくみ

①ごく少量ずつ繰り返し経口摂取された非変性II型コラーゲンは抗原として腸管壁M細胞を介して取り込まれてパイエル板に至り、②樹状細胞によって貪食されます。 樹状細胞はT細胞に対して非変性II型コラーゲンの構造を提示します。③このときTGF-β、IL-10、RA(レチノイン酸)の共存下でT細胞は抗原の構造を記憶したT-reg(制御性T細胞)に誘導されます。④T-regは患部の発する特定の化学物質(ケモカイン)に誘引されて患部に到達し、TGF-βやIL-10などの抗炎症サイトカインを分泌します。⑤その結果、炎症の鎮静化とともに関節本来の新陳代謝サイクルが復調し、関節痛が改善されるというものです。

コラーゲンペプチドのひざ関節痛の改善の為の1日に必要な摂取量は800mg~10gなのですが、非変性II型コラーゲンの場合はわずか数10mgで効果が示されています。

変形性ひざ関節症とは、ひざの軟骨がすり減って骨が変形することによって痛みが生じる病気です。潜在的な患者数は全国で3000万人おり、全人口の4人に1人ですが、高齢者になると2人に1人とも言われています。放置するとひざの痛みだけではなく、股関節痛、腰痛、足首の痛みの原因にもなり、さらに進行すると最悪の場合、寝たきりになる可能性もあります。

したがって、作用機序の異なる成分、コラーゲンペプチド、グルコサミン、CoQ10、変性II型コラーゲンの併用で効率的なひざ関節のケアをここに提案します。また、変性II型コラーゲンの摂取では、小腸においてT-reg(制御性T細胞)への誘導が行われていますが、大腸においてバクテロイデス菌などの酪酸産生菌によって産生する酪酸もT-regへの誘導が知られておりますので、プレバイオティクスのα-オリゴ糖の併用摂取も更なる効果が得られる可能性があると考えられます。