研究成果
第53回 線虫(Caenorhabditis elegans)の各種ストレス耐性におけるトコトリエノール-γ-CD包接体の効果
本研究成果は、2012年9月7日(金)、第29回シクロデキストリンシンポジウム(9/6~7、星薬科大学(東京)にて開催)において発表しました。
背景
当社ではシクロデキストリン(CD)の包接機能を利用して、機能性成分の水溶性、安定化、バイオアベイラビリティなどを向上させる技術を有しております。それらの成果は化粧品、食品等の様々な分野で広く利用されています。最近では高いアンチエイジング作用を有する『“スーパービタミンE”トコトリエノール』という成分に注目し、それをγ-シクロデキストリンで包接することで安定な粉末の作成に成功しました。現在、健康食品・機能性化粧品素材を目指した機能評価を行っており、γ-CD包接により熱安定性や吸収性が向上することを明らかにしています(※詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第38回」を参照して下さい)。
今回は、線虫(Caenorhabditis elegans)を用い、各種ストレス耐性におけるトコトリエノール-γ-CD包接体の摂取効果について報告します。
トコトリエノールの構造
メチル基の位置によって4つのトコトリエノールが存在する。
トコトリエノールの訴求点
紫外線ストレス耐性
- トコトリエノール-γ-CD投与による線虫の紫外線ストレス耐性の向上が観測された。
化学的ストレス耐性
- トコトリエノール-γ-CD投与による線虫の過酸化水素ストレス耐性の向上が観測された。
次に、トコトリエノールによる線虫の寿命延長効果について、α、γ、δ-トコトリエノール単体を用い比較検討を行いました。
- いずれのトコトリエノールでも線虫の寿命延長効果が観測され、δ型でより顕著だった。
まとめ
- トコトリエノール-γ-CD包接体は抗酸化作用により、UVおよび過酸化水素によるストレス条件下においても、線虫の寿命を延長した。
→ トコトリエノールはそのUVおよび酸化ストレスに対する抵抗性を付与すると考えられる。 - トコトリエノール-γ-CD包接体の型別単体(α、γ、δ)を線虫に投与したところ、全ての単体で、有意な寿命延長が観察されたが、特にδ-型トコトリエノールでその効果は顕著であった。