第86回 ブロッコリースプラウト中スルフォラファンのα-シクロデキストリンによる安定化検討|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第86回 ブロッコリースプラウト中スルフォラファンのα-シクロデキストリンによる安定化検討

概要

ブロッコリースプラウト(BS)中に存在するグルコラファニンはBSの咀嚼や破砕の際にミロシナーゼという酵素によりスルフォラファン(SFN)(図1)に変化します。このSFNは抗肥満作用1)や解毒作用などを示す機能性成分として注目されていますが、揮発しやすく非常に不安定な物質でもあります。SFNの安定性については、高純度の合成品のSFNに対してα-シクロデキストリン(α-CD)による改善が示されていますが2)、BS抽出物での詳細な検討は行われていませんでした。当社ではこれまでにCDを用いたBS抽出液の保存安定性試験を行い、α-CDによってSFNの安定性が向上することを報告しています3)
本研究ではCDを用いたBS粉末を作製し、その中のSFNについて安定性を評価しました。

図1. スルフォラファンの構造
図1. スルフォラファンの構造

実験

2-1. CDを用いたBS粉末の作製
BSに水を加え60℃で10分間静置した。そこにデキストリン、α-CD、β-CD、γ-CDを添加し、ミキサーで混合し得られたペーストを凍結乾燥することにより粉末を作製した。

2-2. CDを用いたBS粉末中SFNの熱安定性試験
BS粉末を試験管に量り取り、140℃に加熱した。0, 10, 30, 60分後に粉末中のSFNを酢酸エチルで抽出し、HPLCにて定量した。0分の値を100%としてSFN残存率を算出した。

結果・考察

140℃・10分の加熱条件下では、BS単独の粉末はSFNがほとんど残存しておらず、デキストリン粉末でも35%しか残存していなかったのに対して、γ-CD粉末では53%、β-CD粉末では80%、α-CD粉末では84%の残存率となり、α-CD粉末が最も高い安定性を示した(図2)。また、α-CD粉末は60分の加熱条件下でも71%と高いSFN残存率が確認された。BS粉末中のSFNは、高温加熱処理を受けると直ちに揮発してしまうが、α-CDの包接作用によって揮発を抑制でき、安定性が向上したと考えられた。

図2. BS粉末中のスルフォラファンの熱安定性におけるCDの効果
図2. BS粉末中のスルフォラファンの熱安定性におけるCDの効果

まとめ

本研究により、ブロッコリースプラウト(BS)粉末中のスルフォラファンについて、α-CDを用いることにより熱安定性が高まることがわかりました。また、α-CDの摂取は様々な健康増進効果を示すことから、BS‐α-CD粉末は新たな健康食品の開発において非常に有用な素材であることが示されました。
※詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第6回第42回および第85回」を参照して下さい。

参考文献

1) Kyeong-Mi Choi et al., Journal of Nutritional Biochemistry, 25, 201–207 (2014).
2) Jed W. Fahey et al., Molecular Nutrition & Food Research, 61, 1600766 (2017).
3) 大西麻由ら,第35回シクロデキストリンシンポジウム講演要旨集, 162–163 (2018).