第92回 α-シクロデキストリン摂取による抗肥満効果|株式会社シクロケムバイオ
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研究情報
研究成果

第92回 α-シクロデキストリン摂取による抗肥満効果

概要

肥満にならないために食事内容や運動習慣に気を付けることが非常に重要であると考えられています。また、食物繊維や難消化性オリゴ糖は腸内細菌のエサとなることにより、宿主に対し生活習慣病の予防効果をはじめとした様々な健康増進効果をもたらす短鎖脂肪酸(SCFAs)1)の産生を増加させることが明らかにされています(図1)。
α-シクロデキストリン(α-CD)は難消化性かつ腸内細菌のエサとなる性質を持っています。実際に、当社ではこれまでにラットにおいて、α-CDの摂取が腸内細菌層を改善し、盲腸内のSCFAs量を増加させることを報告しています。(※詳しくは、当社ホームページの研究成果「第85回」を参照して下さい。)
そこで本研究では高脂肪食を摂取させたマウスにおけるα-CD摂取による抗肥満効果について検討を行いました。

図1. 腸内細菌由来の短鎖脂肪酸の機能
図1. 腸内細菌由来の短鎖脂肪酸の機能

実験

6週齢の雄性C57BL/6Jマウスを通常食(ND)群、高脂肪食群(HFD)、高脂肪食+5.5%α-CD食(α-CD)群の3群に分け、16週間飼育した。飼育終了後、イソフルラン麻酔下で解剖を行い、盲腸及び精巣周囲脂肪を採取後それらの重量を測定した。盲腸内容物からはSCFAsを、糞便からは腸内細菌叢を分析した。

結果と考察

飼育期間後の体重はND群と比較してHFD群で有意に増加し、α-CD群ではその増加は有意に減少した(図2A)。また試験後の精巣周囲脂肪重量はND群と比較してHFD群で有意に増加し、α-CD群ではその増加は有意に減少した(図2B)。

図2. A:体重増加 B:精巣脂肪重量
図2. A:体重増加 B:精巣脂肪重量

腸内細菌叢を分析した結果、HFD群ではND群と比較して、善玉菌および“やせ”菌として知られるバクテロイデス菌の割合が低下した。一方でα-CD群はHFD群と比較して善玉菌およびバクテロイデス菌の割合の増加と供に悪玉菌の割合の減少が見られた(図3)。さらに盲腸内容物中のSCFAs量はHFD群と比較してα-CD群で有意に増加した(図4)。

図3. 糞便中細菌叢
図3. 糞便中細菌叢
図4. 盲腸内容物中のSCFAs量
図4. 盲腸内容物中のSCFAs量

腸内で作られたSCFAsは脂肪組織において、脂肪の小型化を促進するPPARγ遺伝子を促進することが知られており2)、今回のα-CDの摂取による抗肥満効果は、腸内における腸内細菌叢の改善に伴うSCFAsの増加が関わっていることが考えられます。

まとめ

本研究から、α-CDの摂取により抗肥満効果が期待されます。加えてこれまでにもα-CDの摂取による血中中性脂肪の低減や血糖値上昇抑制効果などが知られていることから、α-CDは生活習慣病予防の新たな健康食品の開発において非常に有用な素材であることが示されました。
(※詳しくは、当社ホームページの最新研究成果「第6回」および「第42回」を参照して下さい。)

本研究結果は国際学術雑誌Biofactorsに掲載されています。
【DOI】https://doi.org/10.1002/biof.1429

参考文献

1) Koh A et al., Cell, 165:1332-1345 (2016).
2) Kota BP et al., J. Clin. Invest. 101:1354–1361 (2005).