体力に劣る日本人アスリートが知るべきスポーツ栄養学(1)運動とタンパク質摂取のタイミング|株式会社シクロケムバイオ
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体力に劣る日本人アスリートが知るべきスポーツ栄養学(1)運動とタンパク質摂取のタイミング

今回は、高いスポーツパフォーマンスを求めるアスリートのため、体力の劣る日本人アスリートが知っておくべきアスリートとしての筋肉を作り、維持するためのスポーツ栄養学についてお話します。

運動は有酸素運動と無酸素運動に分けられ、それぞれどちらの運動を主体としたスポーツであるかによって、鍛えるべき筋肉も異なりますが、すべてのスポーツは複合的なものですので、基本的にはどちらの筋肉も鍛えて維持しておくことが重要です。

その筋肉を鍛えて維持するために、トレーニングが必要です。しかし、その筋肉はタンパク質でトレーニング(運動)によって、タンパク質は分解していきます。よって、運動とともにタンパク質(筋肉)を合成するためのタンパク質の摂取が必要です。では、どのタイミングでタンパク質を補給するのがいいのでしょうか?

運動によるエネルギーロスを考慮して、糖分を加えたタンパク質の摂取タイミングを検討したLevenhagenらの2001年に報告された論文があります。健常人の摂取タイミングによる脚筋肉タンパク質の分解と合成の割合による筋肉の蓄積量について評価しています。運動したときにタンパク質と糖分を摂取しなかった場合、タンパク質分解量の方が合成量よりも多くなり、明らかに筋肉量が減っていくことが示されています。しかし、運動直後にタンパク質と糖分を摂取すると分解量より合成量の方が増しており、筋肉タンパク質量が増加すること、また、運動3時間後では、筋肉タンパク質量は摂取しなかった場合と同様に減少していくことが明らかとなっています。

図1. 運動とタンパク質+糖分摂取タイミングによるタンパク質蓄積量の変化
図1. 運動とタンパク質+糖分摂取タイミングによるタンパク質蓄積量の変化

同様に、レジスタンス運動直後の食事の摂取が、筋肉になるという検討が2001年にEsmarckらによって報告されています。ただ、この検討は、アスリートではなく高齢者24名を対象にしたものです。12週間に渡って、レジスタンス運動の直後と2時間後にタンパク質10gを含むサプリメントを摂取してもらったところ、直後の場合、有意に大腿四頭筋量が増加することが示されましたが、2時間後ではタンパク質を摂取しても筋肉量に変化は観られませんでした。

図2. 運動とタンパク質摂取タイミングによる大腿四頭筋量の変化
図2. 運動とタンパク質摂取タイミングによる大腿四頭筋量の変化

また、2000年、Suzukiらはラットを用いてレジスタンス運動直後または4時間後の食事摂取(8週間)と筋肉量および脂肪組織量の関係を調べています。

図3. レジスタンス運動直後または4時間後の食事摂取(8週間)と筋肉量および脂肪組織量の関係(ラット)
図3. レジスタンス運動直後または4時間後の食事摂取(8週間)と筋肉量および脂肪組織量の関係(ラット)

ここでも、運動直後に摂取した方が筋肉量は増えること、そして、興味深い知見として、運動4時間後の食事摂取は筋肉にならず脂肪になってしまうことが示されています。

どうも、スポーツパフォーマンスをさらに向上させたいアスリートにとって、運動(トレーニング)した後は、なるべく早くに焼肉(タンパク質)ご飯(糖分)を食べるのが筋肉増強のためには良さそうですね。次回は、タンパク質である筋肉中に多く含まれる分岐型アミノ酸(BCAA)とグリコーゲンローディングについてのお話です。