体力に劣る日本人アスリートが知るべきスポーツ栄養学(2)分岐鎖アミノ酸BCAA摂取のタイミング|株式会社シクロケムバイオ
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体力に劣る日本人アスリートが知るべきスポーツ栄養学(2)分岐鎖アミノ酸BCAA摂取のタイミング

スポーツパフォーマンスをさらに向上させるには、筋肉増強はいうまでもありません。前回は、筋肉増強のためには、運動直後にタンパク質と糖分を摂取すると良いということを学術論文に記載されている検討結果をもとに力説しました。では、タンパク質はどのようなものを摂ればいいのでしょうか?

人の体を形成しているタンパク質もさまざまな種類があります。タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されていますが、たとえば、髪の毛、爪、皮膚(表皮)などを構成しているケラチンタンパク質の場合は、アミノ酸の中でもシステインが重要ですし、血管、軟骨、骨、真皮内に存在するコラーゲンタンパク質の場合は、アミノ酸の中でもプロリンが重要なように、筋肉を構成しているタンパク質の場合は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)であるバリン、ロイシン、イソロイシンが多く含まれ、大変重要なアミノ酸なのです。そこで、筋肉増強のためには、絞り込んでいくと、タンパク質というよりも、これらのBCAAを運動の、どのタイミングで、どの割合で、どれ位、補給すればいいのか、ということになります。

自然界の多くの筋肉を構成しているタンパク質には、BCAAのバリン、ロイシン、イソロイシンが1:2:1の比率で含まれています。そこで、2005年に、濱田らは、その構成比のBCAAを4,000mg、2,000mg、1,000mg、500mg含有する飲料を健常人8名に飲んでもらい、BCAA摂取後の血漿BCAA濃度の変化量を測定しています。その結果、(図1)に示しますように、たとえ低摂取量の500mg摂取した場合でも摂取後、45分以内であれば、血漿中のBCAAは高濃度に維持できること、そして、投与後、30分にBCAA濃度はピークに達することが明らかとなりました。つまり、筋肉増強のためには運動直後、出来れば30分以内のBCAA補給が好ましいことになります。

図1. BCAA投与量と血中BCAAの変化
図1. BCAA投与量と血中BCAAの変化

また、運動前にBCAAを摂取すると、運動中の乳酸産生が抑えられること、運動中の筋肉タンパク質の分解が抑制され、また、筋肉損傷の回復が促されること、さらには、運動中に摂取すると中枢疲労が改善されることが分かってきました。その理由としては、血中遊離トリプトファンが増大すると、脳に取り込まれてセロトニン合成が促進し、中枢疲労が発生しますが、運動中BCAA摂取は血中トリプトファン/BCAA比を小さくしトリプトファンの脳への取り込みを抑制するためだと考えられます。

ただ、BCAAは脂溶性部位を持っているため苦味があり、摂取し辛いという問題がありました。そこで、その問題を解決したのがα-シクロデキストリン(α-CD)による包接化技術です。BCAAに対して、約1.5当量のα-CDを加えると苦味が低減できますので、大変飲みやすくなります。

図2. α-シクロデキストリンによるBCAAの苦味低減効果
図2. α-シクロデキストリンによるBCAAの苦味低減効果