脂肪酸の種類と健康への影響(6) α-シクロデキストリンを用いた新規ココナッツミルクパウダーとは|株式会社シクロケムバイオ
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2015.3.10 掲載

脂肪酸の種類と健康への影響(6) α-シクロデキストリンを用いた新規ココナッツミルクパウダーとは

前回…脂肪酸には大まかに、体に良い脂肪酸の不飽和脂肪酸と悪い脂肪酸の飽和脂肪酸に分けることができるものの、飽和脂肪酸の中にも体に良い飽和脂肪酸があること…

体に悪いのは長鎖の飽和脂肪酸であって中鎖の飽和脂肪酸は健康に良い脂肪酸であること…

そして、その体に良い中鎖脂肪酸であるラウリン酸を豊富に含むココナッツオイルについて詳しく紹介しました。

今回は、このシリーズで、残された他の脂肪酸の紹介する前にココナッツについての知識をさらに深め、ココナッツオイルを主成分とするココナッツミルクのα-シクロデキストリンによる再分散性パウダーの開発を紹介します。

そもそも、ココナッツ(ヤシの実)とはヤシ科の植物でココヤシの果実です。外側は繊維質の厚い殻に包まれ内側には大きな種子があります。未成熟な種子はその内側が液状胚乳で満たされています。これがいわゆるココナッツジュースなのです。これを発酵させるとゲル状のナタデココとなります。

未成熟果の固形胚乳はそのまま食べることもできますが、種子が成熟するとともに白く大きくなってきます。この固形胚乳をすり潰し、水もしくはお湯で成分を絞り出し、裏ごししたものがココナッツミルクなのです。ココナッツミルクはカレーやお菓子などに幅広く利用されています。

ココナッツオイルはココヤシから作られる油脂であるヤシ油のことを意味しています。前回紹介しましたように、最近、ココナッツオイルがダイエット効果やアルツハイマー病の予防と改善に有効であるとの研究報告がTVで紹介されたため、にわかに注目されていますが、それまではココナッツミルクの利用の方がより一般的でした。

ココナッツオイルもココナッツの固形胚乳から作られていますが、固形胚乳を乾燥したコプラ(と呼ばれます)から圧搾し、溶媒抽出して得られる油脂をさらに精製したものですのでタンパク質や炭水化物は含んでいません。つまり、ココナッツオイルはココナッツミルクから油脂分のみを取り出したものなのです。よって、ココナッツオイルとココナッツミルクのいずれも栄養素の主成分は油脂であり、中鎖脂肪酸のラウリン酸なのです。(表1)

表1. ココナッツミルクの栄養成分(100gあたり)

エネルギー 150kcal
脂質 16.0g
水分 78.8g
炭水化物 2.8g
たんぱく質 1.9g
ナトリウム 12mg

五訂日本食品標準成分表より

また、ココナッツの油脂にはラウリン酸とともに抗酸化物質のスーパービタミンEとして注目されているトコトリエノールも多く含まれています。

ココナッツミルクにデンプンやデキストリンなどの賦形剤とカゼインナトリウムを乳化剤として加えて、乾燥させたものが利便性のあるココナッツミルクパウダーとして利用されています。

ただ、お湯や牛乳で戻すと再びココナッツミルクに戻るとされていますが、油分が多いためになかなか元通りのココナッツミルク状態には戻りにくく、特に水だと再乳化できずにダマダマになってしまう問題があります。さらに、乾燥中に風味成分が失われるために生のココナッツミルクに比べると風味が悪いといった問題もあるのです。

そこでα-シクロデキストリンを用いた新たなココナッツミルクパウダーが開発されました。

α-シクロデキストリンは、環状のオリゴ糖ですが、その環状構造の内側に疎水性の物質を取り込む性質があり、乳化剤として利用できます。(図1)

図1. α-シクロデキストリンによる乳化作用
図1. α-シクロデキストリンによる乳化作用

そして、ココナッツミルクパウダーを作る際のカゼインナトリウムの代替物質としても使用することができることがわかったのです。しかも、カゼインナトリウムを用いた場合に比べ、水への再分散性も高く、乳化状態も長時間持続できるのです。(図2と図3)

図2. ココナッツミルクパウダーの再分散状態(その1)
図2. ココナッツミルクパウダーの再分散状態(その1)
図2. ココナッツミルクパウダーの再分散状態(その1)
図3. ココナッツミルクパウダーの再分散状態(その2)

さらに、α-シクロデキストリンは乾燥時にココナッツミルクの揮発してしまう風味成分も空洞内に保持できるため、再分散してココナッツミルクに戻したときに生のココナッツミルクと同様の風味を保持できることが確認されました。

尚、α-シクロデキストリンを使用したココナッツミルクパウダーの調製方法は、カゼインナトリウムを使用した従来のココナッツミルクパウダーの調製方法と同じです。カゼインナトリウムをα-シクロデキストリンに置き換えるだけで特別な手順や装置は必要ありません。(表2)

表2. α-シクロデキストリンを使用したココナッツミルクパウダーの配合例

ココナッツミルク 50~65%
カゼインナトリウム 0~2%*
マルトデキストリンなどの賦形剤 8~15%
リン酸二カルシウム(緩衝剤) *
α-シクロデキストリン 1~2%
固結防止剤など *
水を加えて100%にする

*好みに応じて添加(無添加でもOK)

この配合例に示すα-シクロデキストリンの添加量で体に悪いとされる長鎖飽和脂肪酸の選択的排泄は十分に可能です。従来のココナッツミルクパウダーに比べて、α-シクロデキストリンを配合したココナッツミルクパウダーは再分散性向上と風味保持の利点を持つだけでなく、ココナッツオイルに含まれる長鎖飽和脂肪酸、食事に含まれる余分な中性脂肪やコレステロール、糖分も排泄する、さらに、腸内環境を整える機能が加えられているのです。

α-シクロデキストリンは粉末の状態で市販されていますので、家族の美容や健康のためにも、ココナッツオイルやココナッツミルクに混ぜてお使いください。