見事に“脂肪の吸収を抑える”スーパー難消化性デキストリン|株式会社シクロケムバイオ
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今、注目していること

見事に“脂肪の吸収を抑える”スーパー難消化性デキストリン

2015年4月に『機能性表示食品』制度が導入されて以来、様々な機能性を表示した食品が販売されてきています。その中でも“難消化性デキストリン”を配合したノンアルコールビールテイスト飲料が注目されています。

デキストリンとは、デンプンを加水分解して得られる低分子量の炭水化物であり、デキストリンの中でも、消化酵素でさらに分解されにくいデキストリンのことを総称して、“難消化性デキストリン”と言います。

しかしながら、最近では、松谷化学工業の製品であるパインファイバーを“難消化性デキストリン”と呼ぶようになってきています。実は、太陽化学のサンファイバー(原料名:グアーガム加水分解物)やコサナのピュアファイバー(原料名:α-シクロデキストリン)も同様に消化酵素で分解されにくい“難消化性デキストリン”なのです。

そこで、パインファイバーやイージーファイバー、そして、サンファイバーなどの難消化性デキストリンと比較して、食物繊維としての能力が際立って高い難消化性デキストリンであるピュアファイバー(α-シクロデキストリン)のことを、スーパー難消化性デキストリンと呼ぶようになりました。

何がそんなに際立っているか?

まず、前回のコラムをご参照ください。
糖尿病患者の認知症リスク(2) コラム:AGEsについて

このコラムでは、先ず、AGEsについて説明しています。簡単に言うと、AGEsはタンパク質と糖が加熱した際に反応して(メイラード反応といいます。)出来た褐色の物質です。AGEsは糖尿病患者の血清中に高濃度に発現するものですが、AGEsの中には発がん性が疑われるものもあります。そして、糖の一種である殆どの難消化性デキストリンはタンパク質やアミノ酸を糖化して、AGEsを作ってしまうのですが、前回のコラムでは、スーパー難消化性デキストリンが唯一、そのようなAGEsを作らないことを示しています。

図1. 各種デキストリンのメイラード反応
図1. 各種デキストリンのメイラード反応

でも、スーパー難消化性デキストリンが他の難消化性デキストリンと比べてすごいところは、この“タンパク質のAGE化の抑制”にとどまりません。

スーパー難消化性デキストリンのα-CDでも、図2に示すように、ヒト試験において、コレステロールの吸収が抑制されてLDLコレステロール値が下がる。さらには、体重も低下することが判っています。試験方法は、毎食時α-CDを2g、計6g/日、2ヶ月間摂取した群(α-CD群)とα-CDの代わりに等量の不溶性食物繊維であるセルロースを同期間摂取した群(対照群)の各パラメータ-の差を分析しています。

図2. α-CD摂取による体重、コレステロール低減効果
図2. α-CD摂取による体重、コレステロール低減効果

この“脂肪の吸収を抑える”という点では、明らかにスーパー難消化性デキストリンのα-CDの方がすごいのです。ご存知のように、ヒト試験や動物試験などin vivo評価で、一般の難消化性デキストリンよりα-CDの効果の方が高いことを証明することは困難です。

そこで、in vitroでの検討結果を以下に紹介します。

コレステロールや体に良くない悪玉の飽和脂肪酸であるパルミチン酸は水に殆ど溶けません。しかし、小腸液の中には胆汁酸やレシチンといった乳化のための成分が入っているために、それぞれ、コレステロールは0.27mg/mLで、パルミチン酸は0.45mg/mLという溶解度で小腸液に溶解します。(図3のコントロール)このように脂肪は、小腸液で溶解されて体内に吸収されているわけです。難消化性デキストリンは、この溶解度を下げることで、体内への吸収を抑制しています。たとえば、医薬品であるコレスチラミンは、胆汁酸と結合することで小腸液に含まれる胆汁酸濃度を下げ、その結果、コレステロールや脂肪の溶解度を下げ、吸収を抑制しています。(図3のコレスチラミン)一方で、図3に示しますように、スーパー難消化性デキストリンであるα-CDは、他の難消化性デキストリンに比べ、顕著にコレステロールや脂肪の溶解度を下げることが判りました。

図3. コレステロールと飽和脂肪酸の小腸液中の溶解度
図3. コレステロールと飽和脂肪酸の小腸液中の溶解度

ここには示しておりませんが、体にいいEPAやDHAなどの不飽和脂肪酸や脂溶性のビタミン類などの溶解度は下げない、つまり、吸収を抑制しないことも確認しています。

これらの検討結果からα-CDはスーパー難消化性デキストリンといっても過言ではないことが判っていただけたと思います。