生活習慣の認知症リスク(2)睡眠習慣と認知症|株式会社シクロケムバイオ
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2015.9.15 掲載

生活習慣の認知症リスク(2)睡眠習慣と認知症

前回は、生活習慣の1つである運動習慣と生活習慣病(糖尿病・認知症)の関係についての研究報告を紹介しましたが、今回は、運動習慣と共に重要な生活習慣の1つである睡眠習慣と生活習慣病(糖尿病・認知症)の関係についての研究報告を紹介します。(図1)

図1. 運動習慣 快眠 食事習慣 糖尿病 認知症の関係
図1. 運動習慣 快眠 食事習慣 糖尿病 認知症の関係

まず、睡眠不足が食欲を高めるというSpiegelらの報告があります。睡眠不足になると、レプチンという食欲抑制ホルモンが減少、つまり、食欲を抑えられなくなり、その一方で、空腹感とグレリンという食欲増殖ホルモンが増加して、肥満や糖尿病になるということが分かった研究結果です。この報告には、睡眠の認知症予防のメカニズムも推定されていています。脳内の認知症関連物質であるアミロイドβ(Aβ)は昼間に増加するものの睡眠によってAβは脳内から排出されるようです。したがって、睡眠不足になるとAβが蓄積されることになります。睡眠不足で糖尿病と認知症のリスクが高まるわけです。(図2)

図2. 睡眠不足と食欲の関係
図2. 睡眠不足と食欲の関係

糖尿病と密接な関係を有し、糖尿病の指標となるHbA1cが睡眠の不足時間とともに増加することも明らかとなっています。そして、大変興味深いことに、最も理想的な睡眠時間である7時間から睡眠の時間が不足するだけでなく、寝すぎても糖尿病発症の危険度は高まることも判ってきました。(図3)

図3. 睡眠時間による糖尿病発症の危険度変化
図3. 睡眠時間による糖尿病発症の危険度変化

睡眠のメカニズムは恒常性維持機構(疲労で眠る仕組)体内時計機構(夜になると寝る仕組)からなっています。

恒常性維持機構については、徹夜の次の夜は長く眠れることからも分かっていただけると思います。体内にプロスタグランジンD2などの睡眠物質が生成し、睡眠が誘発されるのですが、プロスタグランジンD2の原料となるアラキドン酸を多く摂取すれば眠りやすくて良い訳ではありません。現代人はアラキドン酸を多く摂り過ぎており、その結果、プロスタグランジンD2が過剰に生成され、その副作用である発毛阻害でハゲになりやすいことから、気をつけるべきなのです。

一方、夜になると眠くなるという体内時計機構をサポートしているメラトニンという睡眠誘発物質(睡眠ホルモン)は健康的な睡眠に大変重要は役割をしています。

脳の松果体は朝、光を感じるとセロトニンという脳内覚醒ホルモンを分泌します。

このセロトニン分泌が、体内時計をリセットします。つまり、光を感じたときが0時間です。そして、15時間後、セロトニンから睡眠ホルモンであるメラトニン変換され、眠りを誘導するのです。(図4)

図4. 体内時計 ~セロトニンとメラトニンの関与~
図4. 体内時計 ~セロトニンとメラトニンの関与~

セロトニンとメラトニンが快眠のための鍵を握っていることはお解りいただけたと思います。そこで、このメラトニンの前駆体であるセロトニンの原料の体内への供給が重要となってきます。その原料とは…

必須アミノ酸であるトリプトファンです!

トリプトファンは牛乳、マヌカハニーなどの蜂蜜、バナナ、ナッツ、豆類に多く含まれることが分っています。(図5)

図5. 快眠のためのメラトニンの体内生成
図5. 快眠のためのメラトニンの体内生成

そこで、お薦め…毎朝、スプーン1杯のマヌカハニーを牛乳やヨーグルトに混ぜて食べること…その夜は快い眠りにつけると思われます。

そして、快い睡眠時間を7時間とることは長寿の秘訣でもあります。図6は米国の100万人を対象として6年間に渡る調査結果を示しています。7時間睡眠の人を基準にして、睡眠不足でも、寝すぎでも、死亡率は高まっていきます。

図6. 睡眠と寿命
図6. 睡眠と寿命

生活習慣の1つとして睡眠時間を7時間とることは、肥満・糖尿病予防、そして、認知症予防につながり、その結果、長寿効果もあるようです。