眼瞼炎に対するマヌカハニーとMAPの効果 (1)|株式会社シクロケムバイオ
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2017.10.25 掲載

眼瞼炎に対するマヌカハニーとMAPの効果 (1)

眼瞼(がんけん)炎とは瞼の辺縁で起こる炎症で、瞼の皮膚に起こる「眼瞼皮膚炎」、目尻に起こることが多い「眼角眼瞼炎」、睫毛の付け根あたりに起こる「眼瞼縁炎」の総称です。その原因は非感染性の薬品や化粧品に対するかぶれやアレルギーで起こる場合と細菌やウイルスに感染して起こる場合があります。主な原因菌としては黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、緑膿菌などがあげられ、異常に繁殖して炎症を引き起こすことが知られています。

治療薬にはタリビットなどの合成抗菌剤やステロイド系薬剤を含有する眼軟膏がありますが長期投与による薬物耐性や副作用のリスクを伴います。そこで、抗炎症・抗菌効果の優れたマヌカハニー、及び、そのマヌカハニーをαオリゴ糖で粉末化したマヌカハニーαオリゴ糖パウダー(MAP)を用いた眼軟膏・薬用アイクリームの研究開発が行なわれ、2016年から2017年に二つの研究報告がありました。MAPの検討理由には、これまでの研究報告からピロリ菌やアクネ菌など様々な病原細菌に対してMAPの方がマヌカハニー単独よりも抗菌活性の高い場合が多いためです。

図1. マヌカαオリゴパウダー(MAP)によるピロリ菌の増殖抑制
図1. マヌカαオリゴパウダー(MAP)によるピロリ菌の増殖抑制
図2. マヌカとオリゴによるアクネ菌増殖抑制作用
図2. マヌカとオリゴによるアクネ菌増殖抑制作用

その一つ目の研究報告はニュージーランドオークランド大学のCraigらによってBMJ Open Ophthalmologyに投稿され2016年に発表されたタイトルが『Preclinical development of MGO Manuka Honey microemulsion for blepharitis management』という論文です。(Craig JP, et al. BMJ Open Ophth 2016;1:e000065. doi:10.1136/bmjophth-2016-000065)

この論文では眼瞼炎を引き起こす細菌に対するMAPとマヌカハニー単独の効果の評価と眼周囲への投与を目的に作製されたマヌカハニーマイクロエマルジョン(MHME)の角膜上皮細胞生存率およびウサギ眼耐性の評価が報告されています。

眼瞼(がんけん)炎の原因菌に対するMAPとマヌカハニー単独の効果を検証したところ、MAPは、MIC(最小阻止濃度)評価によって、グラム陰性菌の緑膿菌に対する抗菌効果はマヌカハニー単独と同等でしたが、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌に対してはマヌカハニー単独より大きな阻害および殺菌作用を示していました。また、MBC(最小殺菌濃度)評価においては、今回の試験濃度では、マヌカハニー単独では殺菌作用を示さず、MAPはグラム陽性菌の黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌に対しての殺菌作用はありましたが、グラム陰性菌の緑膿菌に対して殺菌作用を示さなかった結果となりました。

図3. 眼瞼(がんけん)炎の原因菌に対するMAPの効果
図3. 眼瞼(がんけん)炎の原因菌に対するMAPの効果

二つ目の研究報告は同じくCraigらの検討で、同じジャーナルに2017年に投稿され受理されたもので、タイトルは『Randomised masked trial of the clinical safety and tolerability of MGO Manuka Honey eye cream for the management of blepharitis』で、MHMEを用いたアイクリームのヒト臨床試験によってその安全性の高いことが示されています。

以上のように、MAPはマヌカハニー単独に比べ、様々な病原細菌に対して、抗菌効果が優れており、一方で、人に対する安全性も高いすばらしい素材であることが判ってきました。