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マヌカハニーで認知症予防(1) 『名医とつながる!たけしの家庭の医学』より

はちみつは認知症対策に有効であるとの研究が人気TV番組の『名医とつながる!たけしの家庭の医学』(2018年1月23日放送)で取り上げられました。最新研究で発見!認知症を引き起こす原因物質の一つが歯周病原因菌であるギンギバリス菌由来のリポ多糖(LPS)であることが判明!LPSが増加している認知症患者が出している独特の臭いとは!?とのことでした。

そこで、ここでは、その取り上げられた幾つかの研究と知見について紹介します。

まず、アルツハイマー病患者からギンギバリス菌由来のLPSが検出されたとの報告です。
(Determining the presence of periodontopathic virulence factors in short-term postmortem Alzheimer's disease brain tissue. J Alzheimers Dis., 2013, 36 (4), 665-677)

LPSはギンギバリス菌などのグラム陰性菌の細胞壁の外膜を構成している成分です。アルツハイマー病患者10名と非アルツハイマー病患者10名の死後、脳を解剖し、ギンギバリス菌由来のLPSの存在をウエスタンブロッティング法で判定したところ、アルツハイマー病患者10名の内、4名からLPSが検出され、非アルツハイマー病患者からは検出されませんでした。

表1. アルツハイマー病患者からのLPS検出
表1. アルツハイマー病患者からのLPS検出

歯磨きで口内悪玉菌を除去し、ハチミツを食べるとLPSを撃退できると番組では言っています。LPSが増加している人の共通点は特有の口臭“生ごみのような腐敗臭”とのことです。

口の中の常在菌は健康な人でも2000億個いて、口腔ケアをしていない人では1兆個いるそうです。その一部の悪玉菌が歯周病原因菌のギンギバリス菌であり、LPSと同時に特有のガスを発生し、特有の口臭となるそうです。よって、ギンギバリス菌の数が増えるとLPSが異常に増加し、LPSは脳で炎症を起こし、認知症リスクを高めることとなります。

ハチミツに含まれるフラボノイドがLPSによる炎症を抑制することが報告されています。番組ではハチミツの効能を独自に検証しています。物忘れがひどくなったと自覚している女性(78歳)に1日3回の歯磨きと夜にハチミツを摂ることを1週間続けてもらったところ、口臭の低下と物忘れの改善傾向があったとのことでした。

脳内ではミクログリアという免疫細胞が脳内のウイルスや病原体が侵入した際に防御しています。しかし、ミクログリアの活性化に伴い、炎症性サイトカインや活性酸素などの神経障害を起こす因子が同時に産生します。以下のアルツハイマー病と歯周病を関連付ける報告を参照してください。

アルツハイマー病患者60名を対象とし、6ヶ月間のコホート試験を行ったところ、歯周病のアルツハイマー病患者の認知機能低下率は歯周病でないアルツハイマー病患者の6倍でした。(Periodontitis and cognitive decline in Alzheimer's disease. PLoS One, 11 : e0151081 (2016))

ギンギバリス菌由来のLPSはミクログリアを活性化し、脳炎症を発症することが明らかとなっています。(Leptomeningeal cells transduce peripheral macrophages inflammatory signal to microglia in reponse to Porphyromonas gingivalis LPS. Mediators Inflamm, 2013 : 407562 (2013).)

活性化ミクログリアはアミロイドβの産生・蓄積と認知機能障害を引き起こすことが判明しました。(Cathepsin B plays a critical role in inducing Alzheimer's disease-like phenotypes following chronic systemic exposure to lipopolysaccharide from Porphyromonas gingivalis in mice. Brain Behav Immun, 65 : 350-361 (2017).)

したがって、ミクログリアの働きを活性化させるとともに、炎症を抑える成分があれば、認知症への予防効果が期待できることになります。

そこで、この番組では“蜂蜜フラボノイドがLPSによる炎症を50%抑えた”という論文を紹介していました。(Anti-inflammatory Activity of a Honey Flavonoid Extract on Lipopolysaccharide-Activated N13 Microglial Cells. Agric. Food Chem. 2012, 60, 12304-12311)

この論文ではイタリアのマルケ州産のマルチフローラルハニーのハチミツフラボノイド抽出物(Honey Fravonid Extract, HFE)を用いて検討しています。HFEのフラボノイドとその含量を表2に示しています。

表2. 蜂蜜フラボノイド抽出物(HFE)
表2. 蜂蜜フラボノイド抽出物(HFE)

ミクログリア細胞にLPSで刺激を与えると、炎症性メディエーター(炎症を起こす物質)であるTNF-αやiNOSが産生しますが、HFEが顕著に抑えることが明らかとなっています。

図1. LPS刺激によるTNF-αおよびiNOS産生をHFEが抑制
図1. LPS刺激によるTNF-αおよびiNOS産生をHFEが抑制

また、同時にHFEは試験濃度範囲内では細胞毒性のないことも確かめられています。(iNOSとは炎症によって誘導される一酸化窒素合成酵素のことです。)

LPS刺激後、各炎症性因子の発現量が最大となる時間にmRNA発現量を測定したところ、HFEは、LPS誘発による炎症性因子のmRNA発現を用量依存的に抑制(P < 0.05)することも明らかとなっています。

図2. LPS刺激したミクログリア細胞におけるHFEの影響
図2. LPS刺激したミクログリア細胞におけるHFEの影響

また、LSP刺激によって活性酸素(ROS)は150%まで増加しますが、HFEはROSを顕著に減少させることが分かりました。

図3. LPSによる活性酸素(ROS)産生をHFEが抑制
図3. LPSによる活性酸素(ROS)産生をHFEが抑制

このようにハチミツの成分であるHFEがミクログリア活性化に伴う、炎症を抑える作用があり、アルツハイマー病を含めた神経炎症を伴う神経変性疾患の潜在的な予防治療剤であることを明らかとし、ハチミツが認知症予防に有効であることが明らかとなっています。