小型LDLコレステロールについて(2)LDLはなぜ小型化するか?
このシリーズでは、小型LDLコレステロールとは、いったいどのようなものか、そのリスクマーカーとしての鋭敏さはこれまでの研究からどこまで分かっているのか、小型LDLコレステロールが多いとどれほど危険なのか、小型LDLコレステロールが多いために冠動脈疾患を患った際の医薬品による対処法にはどのようなものがあるか、そして、小型LDLコレステロールが多いことが健康診断で判明した際の未病患者に対する機能性食品による対処方法にはどのようなものがあるかなどについて、医師や薬剤師等の専門家に向けてではなく一般の方々に分かりやすく概説しています。(1)では小型LDLとはどのようなものかについて説明しました。今回は、その小型LDLはどのようにして作られているかについて説明します。
LDLのサイズを小型化する最も大きな要因は中性脂肪(トリグリセリド、TG)です。平野らのグループの研究(Hirano T, et al; Atherosclerosis 141; 77-85, 1998)によると、TGの高い人はLDLのサイズが小さい小型LDLが多いことが明かとなっています。
では、なぜTGが増加するとLDLは小型化するのでしょうか?
TGを運ぶ粒子はカイロミクロンやVLDLなどのTGをたくさん含んでいるリポタンパク(TRL)です。TRLの血中濃度が高くなると高TG血症と言います。血中で、このTRL粒子がLDLと接触すると、TRLのTGがLDLの中に入り込みます。LDLがTGを受け取ると、代わりにコレステロールエステル(CE)をTRLに返します。これは1対1対応で、リピッドトランスファー(脂質交換)といいます。このTGが多くてCEが少ないこの粒子は非常に不安定で、肝臓の肝性リパーゼによって分解されます。その結果、コレステロールの少ない小型のLDLとなるわけです。これが、TGの値が高いと小型LDLができる理由なのです。
小型LDLが作られる上で最も大きな要因はTGなのですが、それに加えてインスリン抵抗性も大変重要になってきます。インスリン抵抗性は2型糖尿病やメタボリックシンドロームで起こるものなのですが、インスリン抵抗性があると、LDLになる前のVLDL(LDLの前駆体といいます)にはVLDL1とVLDL2があるのですが、VLDL1の方が選択的に肝臓から分泌されます。一方で、VLDL2はインスリンと関係なく分泌されVLDL2からLDLが生成します。VLDL1の方が表面積は大きくTGが豊富なのでLDLはVLDL1と優先的にリピッドトランスファー(脂質交換)することになり、小型LDLが生成するのです。その結果、インスリン抵抗性があると小型LDLが増えることになるのです。
Reavenらは小型LDLの多い人とインスリン抵抗性の関係を調べています。(Reaven GM. et. al., J. Clin. Invest 92; 141-146, 1993)一般住民のLDLサイズを測定し、Pattern A(大型LDLの含有量が多い人)とPattern B(小型LDLの含有量が多い人)に分けて、ブドウ糖負荷試験を行ったところ、Pattern Bの人のインスリン値は非常に高いことがわかり、インスリン抵抗性が認められました。このように小型LDLが増えるとインスリン抵抗性がある人が多くなるという結果でした。