筋肉の増強維持にはヒトケミカル高含有の馬肉が一番!|株式会社シクロケムバイオ
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2019.12.17 掲載

筋肉の増強維持にはヒトケミカル高含有の馬肉が一番!

これまでに何度となく「運動や食事による筋肉の増強維持の重要性」について取り上げてきました。筋肉を増強維持することは、20歳代のトップアスリートのためだけではなく、30歳以降の女性の美しいカラダを作り、40歳以降のメタボリックシンドロームが気になる中高年の生活習慣病を予防、そして、60歳以降の高齢者の多くの健康上の問題となっているサルコペニア肥満(若い女性にも見られる)を解消することが知られています。

2019年10月12日に発売した『一生モノの美肌になる!最高の食べ方図鑑』(宝島社)でも三大ヒトケミカル(コエンザイムQ10、R-αリポ酸、L-カルニチン)やファイトケミカルなどの筋肉増強維持のための機能性成分について紹介しています。ただ、食肉に関してこの本では、日本で一般的に食されている牛肉、豚肉、鶏肉に比べて羊肉の方が脂肪燃焼や筋肉増強作用を持つL-カルニチン含有量が高いことを紹介しています。しかし、実は、その羊肉よりも馬肉の方がL-カルニチンのみならず、コエンザイムQ10とR-αリポ酸の含有量も圧倒的に多いのです。

まず、三大ヒトケミカルの一つであるL-カルニチンに関してですが、国連食糧農業機関(FAO)によりますと、羊肉を食する習慣のあるモンゴル、ニュージーランド、アイスランドの国々のL-カルニチン1日摂取量は日本の3倍から5倍であり、それが、ラグビーや相撲などの筋肉を必要とするスポーツ競技の強弱に現れているのではないかと推察されています。でも、もう少し、詳しく見ていきますと、世界最大の羊肉の輸出国のニュージーランドやアイスランドに比べ、モンゴルは羊肉とともに馬肉を食する国であり、ずば抜けてL-カルニチン摂取量の高いことが判ります。

図1. 世界各国民によるカルニチン1日摂取量(FAO資料による)
図1. 世界各国民によるカルニチン1日摂取量(FAO資料による)

そこで、各食肉のL-カルニチン含有量を調査しましたところ、各食肉の中で馬肉に最も多く含まれていることが示されている2019年の報告がありました。羊肉の2倍以上含まれています。(Characteristics of Selected Antioxidative and Bioactive Compounds in Meat and Animal Origin Products. Antioxidants. Kaczynski B et. al., 8(9):335. (2019))

図2. 各食用肉に含まれるL-カルニチン量の比較
図2. 各食用肉に含まれるL-カルニチン量の比較

次に、各食肉に含まれるR-αリポ酸について調査したところ、1992年の報告がありました。R-αリポ酸も各食肉に含まれるL-カルニチンの含有量と同様の比率で馬肉に最も多く含まれていることが確認できました。(International Thioctic Acid Workshop, eds, Schmidt K. & Ulrich H. (Universimed Verlag, Frankfurt am main Germany), pp.69-73(1992))

図3. 各食用肉に含まれるR-αリポ酸の比較
図3. 各食用肉に含まれるR-αリポ酸の比較

さらに、各食肉に含まれるコエンザイムQ10含有量について調査したところ、2010年の報告がありました。しかし、残念なことに、牛肉、豚肉、鶏肉のコエンザイムQ10含有量は調べられているのですが、馬肉が調べられていませんでした。しかしながら、2019年に馬に対して10日、21日とコエンザイムQ10を摂取させて、そのコエンザイムQ10濃度の上昇をみる検討が行われた報告がありましたので、摂取前のコエンザイムQ10含有量で2010年の報告と比較してみました。その結果、L-カルニチン、R-αリポ酸とまったく同じ傾向にあり、コエンザイムQ10の場合も馬が最も多いことが明かとなりました。

  1. 牛、豚、鶏のコエンザイムQ10含有量に関する論文
    Coenzyme Q10 Contents in Foods and Fortification Strategies. Pravst I, Zmitek K, Zmitek, J.Crit Rev Food Sci Nutr. 50(4):269-80. (2010)
  2. 馬のコエンザイムQ10含有量に関する論文
    Effect of daily supplementation with ubiquinol on muscle coenzyme Q10 concentrations in Thoroughbred racehorses. E. Thueson, D.P. Leadon, R. Heaton, I.P. Hargreaves, W.M. Bayly.Comparative Exercise Physiology. 15(3): 219-226. (2019)
図4. 各食用肉に含まれるコエンザイムQ10の比較
図4. 各食用肉に含まれるコエンザイムQ10の比較

実は、ヒトケミカルだけではありません。ビタミンやミネラルも馬肉には多いことが判っています。たとえば、鉄分です。血液中の赤血球の中にはヘモグロビンという体内の各組織に酸素を供給するという大切な役割を担っている物質が存在しています。このヘモグロビンは鉄とタンパク質で作られていて、鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血となり、若い女性の4人に1人が、この貧血であると言われています。馬肉は他の食肉に比べ圧倒的に鉄分が豊富です。

図5. 各食用肉に含まれる鉄分の比較
図5. 各食用肉に含まれる鉄分の比較

一方で、馬肉に含まれる脂肪量やカロリー数は圧倒的に他の食肉に比べ低いことも明らかとなっています。

図6. 各食用肉に含まれる脂肪量の比較
図6. 各食用肉に含まれる脂肪量の比較
図7. 各食用肉に含まれるカロリーの比較
図7. 各食用肉に含まれるカロリーの比較

このように馬肉は、低カロリー・高たんぱく・低脂肪のみならず、鉄やカルシウム、ビタミンB類、多価飽和脂肪酸が多く含まれ、更にL-カルニチン・R-αリポ酸・コエンザイムQ10のヒトケミカルも豊富に含まれる栄養価の高い食品と言えます。